また山極先生の研究によりますと、人間とゴリラの遺伝子の違いは実は1.2%ほどしかなく、このゴリラの社会や生態を見つめる事で、人間がどのような経緯で、今のような形にまで進化してきたのか、その背景というものが見えてきます。
人間は二足で立って、手で食物を運ぶという歩行様式をつくったことによって、敏捷性が落ちました。つまり弱くなってしまったのです。肉食動物が狙うのは、大人ではなくて子どもです。子どもがたくさん肉食動物に殺され、幼児死亡率が上がります。哺乳動物で、肉食動物の餌食になる動物に、日本ではイノシシやシカがいますね。彼らは、一様にある特徴を持っています。それは、たくさん子どもをつくれるということです。たくさん子どもが殺されるのであれば、それ以上に子どもを産まなければ、その種を増やすことはできません。人間の祖先も同じように多産型の道を選びます。ただし、一度にたくさんの子どもを産むことは類人猿の性質上不可能なので、出産間隔を縮めて何度も子どもを産むような形になるのです。そのためには早くに離乳させなければいけない。母乳をあげているうちはプロラクチンというホルモンが出て、排卵が抑制されます。つまり妊娠ができないのです。おっぱいから引き離せば、排卵が回復して、早く次の子どもを産む準備ができる。その為、赤ちゃんの離乳が早くなったのです。そのために、本来ならば授乳しているはずの赤ちゃんへ、代わりに違うものを食べさせるということになった。ゴリラなど人間に近い類人猿は、離乳する前に永久歯が生えています。離乳した時から、大人と同じ物が食べられるのです。でも、人間の赤ちゃんは1〜2歳で離乳しますから、ずっと乳歯です。6歳にならないと永久歯が生えてこない。本来ならば、人間の赤ちゃんは6 歳まではお乳を吸っていていいわけです。ところが、そのずっと前に、赤ちゃんはお母さんから離されます。そのために、赤ちゃんに特別なもの、柔らかい、糖分の高い果物などを運んでもらわなければいけなかった。それにはコストが必要だったし、危険が伴ったはずです。そうまでして人間は赤ちゃんを離乳させ、その成長の遅い赤ちゃんを、みんなで育てるということを始めたのです。 しかも、200万年前には人間の脳が大きくなり始めました。当初はまだ、600ccという、ゴリラの500ccをちょっと超えた段階でしたが、それから150万年間に人間の脳は3倍になりました。われわれの脳はゴリラの脳の3倍ぐらいある。その脳を大きくするために、成長期にまずは脳に過大なエネルギーを送り続けて、その分、身体の成長を遅らせるということを始めたわけです。なので、人間の赤ちゃんはまず脳が一気に成長する。その脳の成長を助けるために、分厚い脂肪に包まれて大きな重たい赤ちゃんを産むようになったわけです。しかも、直立二足歩行によって骨盤の形が大きく変わってしまったため産道を大きくできない。だから、出産に時間がかかる。難産になる。母体が危険にさらされる。それをみんなで助けて出産をさせ、そして、ひ弱でエネルギーがたくさんいる赤ちゃんを、みんなの手で育てる。それが可能になったから、人間はたくさん子どもを増やすことができ、死亡率が高い過酷な環境で生き延びることができるようになった。これが人間の社会力なんです。 遺伝的な違いが判明 今回発見された遺伝的な違いの一つが、ゴリラの拳の皮膚に頑丈なケラチンの層を形成していると考えられる遺伝子だ。ケラチンは爪を構成するタンパク質で、ゴリラ独特の拳で歩く動作(ナックルウォーク)に役立つ。 (1)ゴリラとサルの違いのほうが、ゴリラと人間の違いよりも大きい. 人間とゴリラのゲノム(全遺伝子情報)の違いは1.75%しか変わらないと言われています!生まれたときの人間の脳はゴリラとあまり変わりません。ゴリラの血液型はみんなO型だという話を聞いたことがありますが、ABO型の血液を持っています。 2019年05月14日2018 年4 月21 日(土)、丸ビルホール&コンファレンススクエア(東京都千代田区)を会場に「親鸞フォーラム―親鸞仏教が開く世界」が開催されました。藤原 「AI× ゴリラ× 仏教」という今回のテーマは一見バラバラで、どこに接点があるのかピンとこない方も多いかも知れません。まずAI(人工知能)は、今や私たちの社会において身近なものとなっていますが、このまま社会のAI化が進んでいき、人間の担ってきた仕事がほとんどAIに取って代わられる時代がやって来たとき、はたして人間は、どこで自分が人間であるというアイデンティティを確認できるのか。そのことが改めて問われる時が来るのではないかと思います。また山極先生の研究によりますと、人間とゴリラの遺伝子の違いは実は1.2%ほどしかなく、このゴリラの社会や生態を見つめる事で、人間がどのような経緯で、今のような形にまで進化してきたのか、その背景というものが見えてきます。そして仏教というのは、誰もが生まれ、老い、病んで死んでいく、生老病死という人間の事実を見つめる教えであります。山極 今、人間は文明の大転換の時期に差し掛かっていると私は考えています。さまざまな情報通信機器、そしてAIの出現によって、人間の手によらない、利便性の高い効率的な社会が構築されようとしていること。また、人間自身も医療技術の進歩によって、これまでの人間観が一新しようとしている。私たちは一体どこへ行くのか。どういう未来を描いたらいいのかということに関して、あまりにも不確かな時代であることも事実です。ですから、やはり今一度、人間が来た道を確かめてみなければならないのではないかと誰もが思い始めている。我々は何者なのか。どのような変化の仕方をしてきたのか。そして、これから、どのように変化できるのかということを確かめたいわけです。タイムマシンに乗って未来を見ることはできません。ならば、せめて過去に帰って、過去の我々の姿を見るということが必要なのではないかと思います。しかし、人間の社会や心は化石には残りません。ですから、人間と非常に近い、しかし別の進化の道をたどってきたゴリラやチンパンジーの現在の姿や社会、認知能力から過去の人間を確かめてみたい。これが一番簡単な方法なわけです。そのために私はもう40年近くゴリラの研究をしてきました。ゴリラの群れの中に入って、彼らの側から世界を、人間を眺めてみると、人間の面白い側面が見えてくるのです。
ゴリラと人間の差は”1.75パーセント”
ゴリラは”言葉を持たない人間”?
ゴリラは”身ぶりで会話”する
人間とゴリラのゲノムの違いは1.75%で、共通の祖先から1,000万年前に枝分かれしたらしい。 出典 ゴリラと人は98.25%同じ! チンパンジーは98.73%! 私たちの身体や心は、食物や子育てを分かち合う信頼ということを根本に据えて、社会をつくるという能力によって築かれている。それは、1万2千年前に農耕牧畜が始まり、定住が始まり、都市が出来上がるよりずっと前につくり上げられた私たちの能力なのです。それが今、急激に人口増加が起こり、環境が人工的に変わり、私たちは情報通信機器を使って、様々な人々とつながり、まさに身体ではなく脳でつながり始めています。その脳でつながり始めた延長線上にAIが出現してきているわけです。 人間とゴリラのゲノム(全遺伝子情報)の違いは1.75%しか変わらないと言われています!生まれたときの人間の脳はゴリラとあまり変わりません。ゴリラの血液型はみんなO型だという話を聞いたことがありますが、ABO型の血液を持っています。 ゴリラのココやマイケルが手話で話をしたことのまとめ,手話で会話をするゴリラのお話
ゲノム(全遺伝情報)の解析が進み、ゴリラと人間の遺伝子は98.25%までが同じであることが判明しています(チンパンジーは98.73%が同じ) とはいえ、立派な身体つきを見ると、かなり人間とはかけ離れているようにも見えます。 では骨格はどのくらい違うのでしょうか。 そして、ただ食物を得ていた時とは違い、今度は分配するということが必要になります。例えば食物を3つ持って帰ってきて、それを10人で分ける場合に、不満の無いように分ける方法が必要です。待っている人たちも、自分の取り分が何かということを、そこで考えなくてはならない。そのように食物が人と人とをつなぐ重要な接着剤となったわけです。食物を持ってくる人は、その人間関係をコントロールすることさえできる。だから、食物は人間の社会的な道具になった。これはとても大きな変革だったと思います。 世界で初めて手話を使い人間との会話に成功したゴリラ「ココ」。ココは死んだらどうなるのか教えてくれました。ゴリラは”顔色をうかがう”
遺伝子が生物の設計図であり、世代を超えて伝えられていくということをお聞きになった方も多いと思います。遺伝子は塩基配列によって書かれた暗号と考えてもいいかもしれません。塩基には4種類あり、a, g, c, tという呼称がつけられています。 人間はサルではありません。でも、ゴリラ、オランウータン、チンパンジーという、皆さんが日常、こいつらサルだよなと言っている動物が人間の仲間なのです。 『ゴリラと人、98.25%同じ…ゲノム解読 [読売新聞 3月8日 10時13分配信] ゴリラの全遺伝情報(ゲノム)を、英国などの国際チームが解読した。 人間とゴリラのゲノムの違いは1.75%で、共通の祖先から1,000万年前に枝分かれしたらしい。 この記事は私がまとめました
最初に、分かち合いという話をします。これは、人間の立って歩くという歩行様式に大いに関係があります。ゴリラ、あるいはゴリラを中心とする人間以外の霊長類では、食物を分け合うということはほとんど起こりません。彼らの食べ物は基本的に植物ですから、あえて分ける必要がないのです。彼らが住んでいる場所は熱帯降雨林という、一年中豊かな果物や緑の葉っぱがある場所です。そこでは、個人個人がめいめい好きなものを取って食べれば、それで済んでいたし、一年中食物が途絶えることがほとんどなかった。 人間はゴリラは似てる所がいっぱい(むしろゴリラの方が感情豊かだと感じる部分も)。ゴリラを知ることは人間を知ること。ゴリラには見習うべき箇所もある。更新日: 2018年11月24日
ゴリラは”死を悼む”
ヒトのからだは、30億の塩基対からなっている。そして、この30億の塩基対のうち、ひとりひとりに特有なものはごくわずかで、遺伝子の約99.9%は隣の人と似通っている。物理学者で起業家のリッカルド・サバティーニ(Riccardo Sabat それは身体を、心をつなぎ合わせる能力です。ゴリラはいったん群れを離れてしまえば絶対に自分の群れに戻ることはできません。数日間、いなくなってしまったら、もうその群れの仲間ではいられないんです。姿が消える、つまり身体の接触が途切れるということは死んだと同じだからです。でも、人間は1年や2年どこかに行って、また戻ってきたら同じように付き合えるじゃないですか。それは身体のつながりというものが、心の中でずっと残存し続けているからです。そういうことができるのは人間だけです。それを人間は、進化の間で可能にしてきたのです。 今、私たちは非常に巨大な人口を抱えた都市に生きています。そして、近くにいる人の方が遠くで通信機器としてつながっている人よりも疎遠であるというような、複雑な関係を持ちながら生きています。どうやってそれをコントロールしていいのか、困っているのです。誰を信じていいのか。近くにいる人を信じていいのか、それとも、SNSでつながっている人を信じていいのか。いま人間は身体と脳が分離して、脳だけでつながり始めている。そこに登場したのがAIです。AIは脳をつなぎ合わせることができ、人間をもっとこれまで以上に一体化させるでしょう。その時に、私たちはどう身構えなくてはいけないのか。人間というものが、どういう存在であり続けなければいけないのか。あるいは、どう変われるものなのかということを、しっかり見定めた上で未来を見つめなければならないだろうと思っています。 続く山極 壽一氏(やまぎわ・じゅいち)霊長類学者・人類学者1952 年東京都生まれ。第26 代京都大学総長。霊長類学者・人類学者。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。理学博士。ルワンダ共和国カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンター研究員、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科助教授、同教授、同研究科長・理学部長を経て、2014 年より現職。日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長を歴任。現在、日本学術会議会長、国立大学協会会長、環境省中央環境審議会委員を務める。〒177-0032