エーザイが開発中のアルツハイマー型認知症治療薬候補「BAN2401」エーザイはアルツハイマー型認知症の治療薬を米バイオジェンと共同開発している。BAN2401の第3相治験は世界で約1500人の早期認知症患者を対象に、プラセボ(偽薬)と比較して効果を確かめる。既存の薬は症状を一時改善する効果にとどまるが、BAN2401は進行自体を抑えることを狙っている。2018年に発表した第2相治験の結果で有効性を示していた。エーザイはこれまでBAN2401をはじめ、「エレンベセスタット」「アデュカヌマブ」という3つの認知症薬候補の治験を進めてきた。いずれも原因物質とされる脳内のたんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」を標的としているが、薬によって狙う蓄積度合いが異なる。BAN2401はAβが脳に沈着する前の集合体を、エレンベセスタットは発生段階を、アデュカヌマブは沈着する直前や沈着後を狙う。このうち最も先行するアデュカヌマブは第3相治験に入っていたが、十分な治療効果を証明できない見通しが強まったとして、21日に開発中止を発表した。エレンベセスタットも第3相治験に入っている。認知症は先進国の高齢化などを背景に、患者数が増加している。50年には世界で患者数が1億5000万人を超すとの予測もあり、新薬のニーズは高まっている。米アルツハイマー病協会によると50年時点で発症を5年遅らせることができれば米国の患者数は4割減り、介護などの費用は3670億ドル(約40兆円)減らせる。無料・有料プランを選択会員の方はこちら記事保存有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。Evernote保存ご利用には会員登録が必要です
今年2月nounow 企業での記事共有や会議資料への転載・複製、注文印刷などをご希望の方は、リンク先をご覧ください。 キャンペーンタグ 10月22日、エーザイと米バイオジェンは3月に治験を中止すると発表していたアルツハイマー病治療薬について、臨床試験のデータを新たに解析したところ良好な結果が得られたとして、「2020年の早い段階で米食品医薬品局(FDA)への承認申請を目指す」と発表した。 発表は株式市場に驚きをもって受け入れられ、バイオジェンの株価は同日の取引時間中に26%上昇。エーザイの株価も23日、一時ストップ高となっている。 大きなサプライズだったのは、ほぼ絶望的と見られていた「アミロイドβ仮説」に基づく医薬品に、承認の可能性が出てきたとする内容だったからだ。 アルツハイマー病の発症のメカニズムが実はよく分かっていない。アルツハイマー病患者の脳内には、細胞外にアミロイドβたんぱく質を主成分とする老人斑が見られること、神経細胞内にタウたんぱく質が蓄積して生じる神経原線維変化が見られること、神経細胞の萎縮や脱落が見られることが分かっているが、何が発症の引き金になっているのかなどは解明されていない。 有力視されているのは、長い年月をかけてアミロイドβが脳内に沈着して、それがタウたんぱく質による神経原線維変化を起こして、最終的に神経細胞が脱落するというアミロイドβ仮説だ。この仮説に基づいて、これまでに数多くの医薬品の開発が進められてきた。例えばアミロイドβを減らす抗体医薬やワクチン、アミロイドβをつくり出す酵素の働きを阻害する低分子薬の開発などに数多くの製薬企業が挑んできたが、そのほとんどが開発中止に至っている。その中で、アミロイドβ仮説に基づく創薬に果敢に挑んできたのがエーザイとバイオジェンの連合チームだ。 ところが、3月にバイオジェンとエーザイは、アミロイドβに対する抗体医薬のアデュカヌマブの臨床試験を中止すると発表。9月にはアミロイドβをつくる酵素の阻害薬であるエレンべセスタットについても中止を発表していた。アミロイドβ仮説に基づく創薬はほとんどが失敗し、業界の関心がタウたんぱく質を標的とする創薬へと移りつつある中での今回の発表だったのだ。 アデュカヌマブの臨床試験の中止は、独立データモニタリング委員会がこれ以上試験を継続しても良好な結果は出ないと判断したことに伴うものだった。この時点で解析の対象となったのは、臨床試験を開始して早い段階で投与を受けた患者のデータだった。バイオジェンでは2つの大規模臨床試験を行っていたが、2つとも中止すると発表した。 ところが今回、全てのデータを解析し直したところ、一方の試験で高用量の製剤を投与したグループでは主要評価項目を達成する良好な結果であることが分かった。また、もう一方の試験でも高用量の投与を受けた患者についてのみ解析すると、良好な試験結果をサポートするデータが得られたとした。バイオジェンは今回の解析に当たっては、外部のアドバイザーやFDAとも協議したと説明している。 エーザイとバイオジェンは、BAN2401という抗体医薬についても最終段階の臨床試験を実施しているが、こちらの医薬品もアミロイドβ仮説に基づくものだ。このため、アミロイドβ仮説が正しければ、BAN2401に対する期待も高まりそうだ。 ただ、アデュカヌマブがFDAの審査ですんなりと承認されるかは分からない。アナリスト中には懐疑的な見方をする向きも多い。現在、アルツハイマー病に使える医薬品は幾つかあるが、いずれも症状を抑える医薬品で、根本治療につながる医薬品は存在していない。世界中が待ち望むアルツハイマー病を根治する治療薬が登場するか否かは、もう少し見守る必要がありそうだ。旬の話題やニュースを分かりやすく手短に解説。フォロー機能を設定すると、「1分解説」タグが付いた記事が配信されると画面上で通知されます。「Powered by 参考になった参考にならなかった話題のニュース、トレンドの「読み方」について、日経ビジネス記者がタイムリーに解説します。ビジネストレンド [PR]Facebook Japan岸博幸氏と語るデジタル・プラットフォーマー規制Photosynth4000社が導入済み 遠隔ワークの新常識アトラシアンリモートワークで組織の生産性を最大化する日本マイクロソフト専門家に訊くテレワーク定着“3つの軸”ServiceNow Japan企業の「働き方」を変えるServiceNowKPMGジャパン危機後の大再編時代、好機をとらえる海外M&A戦略アサヒビール岸氏が分析!アサヒ ザ・リッチが快進撃を続ける理由日本オラクルDXによる新ビジネスの創出でニューノーマルを勝抜くキリンビール「キリン グリーンズフリー」大ヒットの秘密に注目Facebook Japan今後日本企業に求められる組織文化とは最新号2020年7月20日・27日号グルメサイトという幻フェルディナント・ヤマグチの走りながら考えるもうやめる?ノルマ~アフターコロナの目標設定~世界展望~プロの目押井守の「映画で学ぶ現代史」もう一度読みたいBooks奥平力の新・列島改造論Views日経トップリーダーフェルディナント・ヤマグチの走りながら考える小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明Viewsデータから“真実”を読み解くスキル年収2割減時代 コロナで消えた「令和の所得増計画」Viewsもう一度読みたいさまよう工場 米中分断時代を生きるBooks河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学フェルディナント・ヤマグチの走りながら考えるデータから“真実”を読み解くスキルViews河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学Books小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明コロナ後の中国Views世界展望~プロの目Booksグルメサイトという幻もうやめる?ノルマ~アフターコロナの目標設定~世界展望~プロの目奥平力の新・列島改造論日経トップリーダー年収2割減時代 コロナで消えた「令和の所得増計画」さまよう工場 米中分断時代を生きる藤中潤の「あなたに代わって調べます」「ぽっちゃり企業」が危機に強かった池松由香のニューヨーク発直行便コロナ後の中国Views世界展望~プロの目池松由香のニューヨーク発直行便外食ウオーズ日経ビジネス電子版のコメント機能やフォロー機能はリゾームによって提供されています。Copyright © 2020 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.各業界に精通した※日本ABC協会2018年度認証部数(ビジネス分野)有料会員限定記事各業界に精通した※日本ABC協会2018年度認証部数(ビジネス分野)「誌面ビューアー」は、紙の雑誌と同じレイアウトで記事を読むための機能です。ウェブブラウザーで読みやすいようにレイアウトされた通常の電子版画面とは異なり、誌面ビューアーでは雑誌ならではのビジュアルなレイアウトでご覧いただけます。スマートフォン、タブレットの場合は専用アプリをご利用ください。 「クリップ機能」は、また読みたいと思った記事や、後からじっくり読みたいお気に入りの記事を保存する機能です。クリップした記事は、メニューから「マイページ」を開き「クリップ」を選ぶと一覧で表示されます。 日経ビジネス電子版では、閲覧を制限している状態を「鍵が掛かっている」と表現しています。有料会員としてログインすると、鍵の有無にかかわらず全ての記事を閲覧できます。登録会員(無料)でも、月に一定本数、鍵付き記事をお読みいただけます。 記事の内容やRaiseの議論に対して、意見や見解をコメントとして書き込むことができます。記事の下部に表示されるコメント欄に書き込むとすぐに自分のコメントが表示されます。コメントに対して「返信」したり、「いいね」したりすることもできます。 記事末尾の「投票」ボタンを押すことで、その記事が参考になったかどうかを投票する機能です。投票できるのは1記事につき1回のみ。投票の結果はすぐに反映され、トップページの記事リストなどにも表示されます。評価の高い記事を選んで読むといった使い方ができます。 「この連載の続きが読みたい」「この議論の展開を見届けたい」と思った時に便利な機能です。「連載をフォロー」「シリーズをフォロー」は、その連載の新着記事が配信された際に、「議論をフォロー」は、その議論に新しいコメントがついた際に通知されます。