【医師監修・作成】「家族性腺腫性ポリポーシス」大腸全体に多数のポリープが発生する病気で多くが遺伝性。治療しないとほぼ100%でがんになってしまう|家族性腺腫性ポリポーシスの症状・原因・治療などについての基礎情報を掲載しています。
家族性大腸腺腫症(fap)は,100個以上 の腺腫性ポリープが結腸および直腸の一面を覆うように生じる常染色体優性遺伝疾患である。 この疾患は8000~14,000人に1人の頻度で発生する。ポリープは50%の患者で15歳までに,95%の患者で35歳までに認められる。 家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis; FAP)は生殖細胞系列におけるAPC遺伝子の病的変異を原因とする遺伝性疾患です。大腸の多発性腺腫を主徴とし、放置するとほぼ100%の症例に大腸がんが発生します。 家族性大腸腺腫症は、大腸に多数の腺腫(ポリープ)が発生することを特徴とし、放置すれば100%近くに大腸がんが発生する遺伝性疾患です。 大腸以外にも、胃や十二指腸にもポリープや癌ができたり、甲状腺癌ができたりします。 ©2018 QLife, Inc. 家族性大腸腺腫症は放置すれば100パーセント近くの人が大腸がんになるといわれ、遺伝する可能性もあり、若いときから生涯にわたり検査と治療が欠かせない病気です。経済的負担の重さにも苦しんでいるなかで、患者さんや家族は「もっと多くの人にこの病気を知ってほしい。 §135-8550@s]æL¾3-8-31(ÕCsS)Copyright © 2020 The Cancer Institute Hospital Of JFCR.
家族性大腸腺腫症(FAP)遺伝子診断 APC遺伝子検査.
取材・文:町口 充 家族性大腸腺腫症は放置すれば100パーセント近くの人が大腸がんになるといわれ、遺伝する可能性もあり、若いときから生涯にわたり検査と治療が欠かせない病気です。経済的負担の重さにも苦しんでいるなかで、患者さんや家族は「もっと多くの人にこの病気を知ってほしい。公的な支援の手をさしのべてほしい」と訴えています。 家族性大腸腺腫症とは、大腸の中におよそ100個、あるいはそれ以上のポリープ(腺腫)が発生する病気です。実際には、100個どころか何千個以上あったり、なかには100個にも満たない場合もあります。これらのポリポーシス(多数のポリープが発生した状態)は、大腸がんの前段階と考えられ、放置したままだと、40歳ぐらいまでに約50パーセントの人が、60歳ぐらいまでには約90パーセントの人が大腸がんになるといわれています。この病気の診療に長年携わり、患者会の活動も支援している埼玉医科大学総合医療センター消化管・一般外科客員教授の岩間毅夫さんは、「大腸がん以外にも、十二指腸乳頭部付近のがん、甲状腺がんなどにも気をつける必要があります」と指摘します。ポリポーシスは、10代前後ぐらいから発生してくるのも特徴。この病気は、APC遺伝子と呼ばれる遺伝子の変異によって生じる優性遺伝性疾患とされています。父親か母親か、どちらか一方の遺伝子の変異が子どもに引き継がれることで発症するのが優性遺伝であり、変異したAPC遺伝子が子どもに引き継がれる確率は50パーセントです。親がこの病気だと子どもも同じ病気になる可能性があるため、「家族性」と呼ばれます。ポリープが100個に満たないケースでも、親などの親族に家族性大腸腺腫症の患者さんがいると、この病気が疑われるのです。なかには両親ともに、変異したAPC遺伝子をもたないケースも4割ほどあるといわれています。発生頻度は1~2万人に1人。つまりかかる人の少ない稀まれな病気です。稀なだけに、患者さんはあちこちに点在していて孤立しがち。正確な知識や情報が伝わりにくく、しかも遺伝性であるため、子どもの発症や治療を含めた将来の生活プランなど、さまざまな心配事が加わり、患者さんや家族は、不安を抱えながら毎日を送っているのです。1998年、関東と関西でそれぞれ、「ハーモニー・ライフ」(関東)と「ハーモニー・ライン」(関西)という患者会が発足しました。「ハーモニー・ライフ」の設立当時からのメンバーで、3代目代表をつとめる小林容子さんは語ります。「私が発症したのは今から10数年前で、44歳のときでした。その当時は患者会もなかったし、もちろんインターネットなどで情報を得ることもできず、病気のことをよく知らないまま、『半年後には死んでしまうのでは』と思ったほどです。患者会ができて、同じ病気をもっている者同士が交流し合うことができ、不安や孤独から解放された気がしました」大学院生のときから家族性大腸腺腫症の患者支援に取り組み、患者会の立ち上げにも加わった慶應義塾大学看護医療学部教授の武田祐子さんはいいます。「基本的には、みんなで集まりましょう、みんなで勉強しましょう、お互いの体験を共有していきましょう、というのがハーモニー・ライフの活動です。なかでも、みなさんが1番求めているのは、『大腸を取ったら、どのように生活していけばいいの?』とか、『子どもにどう伝えたらいいの?』といった生活上の不安や悩みに対するアドバイス。求められているのは、医学的な情報ばかりではなく、実際の体験談なのです。もちろん医学的に問題のある情報には配慮が必要ですが、他の人が実際にどうだったかという体験談を聞いて、最終的には自分で考えて決める。1人ひとりの体験談なら、伝えるのも、聞くのも自由ですからね」ハーモニー・ライフの活動は関東圏以外にも広がっています。離れたところに住む患者さんの生の声を聞こうと、2007年、静岡と福島で患者の集いを開催。このときの費用は、アメリカでがんの啓発・活動支援を行っている米国がん協会(ACSU)からの助成金が当てられ、「福島の集いでは、30代の男性が、『今までだれにも話せなかった』と涙ながらに話をし、とても感動的な集まりとなりました。「その方は親御さんが家族性大腸腺腫症で、ご自身も同じ病気になったけれど、遺伝性の病気だから人には話せないと、気持ちをずっと心に秘めていたそうです。集いのなかで役員の1人が、『自分はこの病気を親から受け継いだが、両親の苦労を見て今は感謝している』と話したのを聞いて、突然その方が『僕にもしゃべらせてください』と立ち上がり、今やっと両親の気持ちが理解できたと話し始めたのです。多くの同席者たちも聞きながら涙していました」このように、小林さんは振り返りますが、この男性のように、話す相手もなく、1人思い悩む患者さんは、全国にまだまだ多いのです。今、患者さんとその家族に重くのしかかっているのは、経済的負担の問題です。会員から寄せられた「医療費に関する意見」にも、次のような訴えが寄せられています。「息子も同じ病気で通院し、内視鏡でポリープを取っている。これからずっとこういう形でいくと医療費が大変」「医療費が重なり、体調が悪くても医師に入院しなさいと言われるのが怖くて、病状をすべて話すことができない」「生命保険の審査で、手術から10年経っているのに、病院へ行って診察を受け、体の術後の傷あとを診て加入を断られた」武田さんはこう指摘します。「家族性大腸腺腫症の患者さんに対して、医療費などの公的助成はまったくありません。日本は国民皆保険なので、健康保険である程度まかなえることになっていますが、ご家族の中に同じような病気の人が何人もいるのがこの病気であり、一生涯みていかなければいけません。ほかの病気なら、治療して治ればそれで終わりとなるでしょうが、家族性大腸腺腫症は一生涯続きます。検査・治療費をずっと払い続けないといけませんから、その負担は大変です」さらに、家族性大腸腺腫症はたとえ大腸を全摘してポリープを取ったとしてもその他の場所にもがん発症の可能性があり、予防と早期発見の努力が不可欠です。ところが、日本の医療制度では、まだ発症していない段階での検査費用は全額自己負担。大腸がんにならないための予防的治療を受ければ、予防薬はやはり基本的に自由診療で10割負担です。一般の健康な人が、がん年齢になったからとがん検診を受けるのとは違います。家族性大腸腺腫症の患者さんは、そのままにしていれば100パーセントがんになるといわれるのですから、定期的な検査や予防処置は、本人や子どもの命を守るために必須なのです。このような病気の特性を正しくとらえ、対象となる人がもれなく検査や予防処置を受けられる制度が整っていてしかるべきなのに、何の対策もとられていないのが現実です。逆にいえば、しっかりと検査し、観察を続けていけば、予防やがんを早期発見でき、患者さんを長生きさせることができるのが家族性大腸腺腫症という病気です。現行法で患者さんを救う道がないなら、新たに法律をつくってもいいはずです。「でも、新しい法律をつくってもらうのもいいですが、それはものすごく大変なこと。とりあえずは今ある法制度の中でも救済策を講じられるはずだし、ぜひ講じてほしい」このように小林さんは、患者さんたちの要望を話します。そこで患者会では、2002年9月、難病対策を担当する厚生労働省疾病対策課を訪れ、担当の課長補佐らと面談。患者さんが抱えるさまざまな困難について訴え、対策を求めました。2003年11月には、「家族性腫瘍診療における社会的問題―医療費補助/適正な医療保険制度に向けての提言」をテーマにパネルディスカッションを開催。翌2004年4月には、衆参両院の厚生労働委員会メンバー70人に陳情書を送付し、同年6月、3人の議員に面会して直接陳情を行っています。患者会としては当面、特定疾患(難病)の対象として認定するよう、申請を行う準備をしているということです。武田さんは次のようにも語っています。「がんになる可能性が大きい家族性大腸腺腫症の患者さんに対するがん予防や治療の取り組みは、大腸がんのメカニズム解明にも貢献しています。今後、日本人に増えていくといわれる大腸がんを予防するうえでも、家族性大腸腺腫症の臨床研究は大きな意味をもっています。その観点からも公的援助が必要だと思います」家族性大腸腺腫症の患者さんのために予算を使えば、たくさんの人々のがん予防につながるのだから、それは国全体の医療費削減をもたらすはず。だとしたら、国はもっと真剣になって支援に取り組むべきだといえるでしょう。 代表者: 小林容子 (構成/町口充)