犬と暮らす犬の脳腫瘍は、発見が難しく治りにくい病気のため、犬の異変に気がついたら、初期症状のうちに動物病院を受診することが大切です。今回は、愛犬が脳腫瘍と診断された時の治療方法や介護(ホームケア)についてご紹介します。犬の脳腫瘍は、主に髄膜腫、グリオーマ、脈絡叢乳頭腫などの「原発性脳腫瘍」と、ガンの転移による腫瘍や鼻腔、頭蓋骨などの脳に隣接する組織から発生した腫瘍が、脳に障害をもたらす「続発性脳腫瘍」があります。犬の脳腫瘍は、10万頭に約14頭発生するといわれており、珍しい病気ではありませんが、人間と同様に、自覚症状はほとんどなく、早期に発見することは困難といわれています。愛犬の今までと違うおかしな行動で異常に気がつくことが多いです。犬の脳腫瘍の臨床症状は、けいれん発作が最も多いですが、中には目立った症状もなく、元気消失だけしか認められない場合もあります。脳神経に関わる病気はさまざまな症状がみられるので、脳腫瘍の可能性にかかわらず、けいれん発作が認められた場合には、獣医師に相談しましょう。犬の症状や病状の経過から、脳腫瘍の可能性があると診断されることもありますが、状態によっては、全身麻酔下でMRI、CT、脳脊髄液検査を行い、MRI画像やCT画像の画像診断を行うことが多いです。血液検査では脳腫瘍の診断はできません。脳腫瘍でなくても、低血糖や肝臓の問題、脳炎や脳梗塞、原因不明のてんかん、ジステンパー感染、中毒などで、脳腫瘍と似た様な症状が認められることがあります。犬の脳腫瘍の症状は、けいれん発作だけではなくさまざまな症状があり、進行していく傾向があります。脳腫瘍と診断された時に大切なことは、必ず獣医師や動物病院と密に連絡をとることです。急なけいれん発作が起きた場合の対処法や緊急の場合の連絡先など、予測される事態に対応できるように獣医師とよく話し合っておきましょう。脳腫瘍が進行すると、腫瘍が発生した部位や進行度により症状は異なりますが、けいれん発作が重症化したり、視力喪失や性格の変化、行動変化、徘徊、旋回、神経障害なども認められることがあります。脳腫瘍は、適切な診断が必要な病気です。犬の脳腫瘍の予防法はありません。もし、脳腫瘍と診断された場合は、まず治療の選択肢や予後などについてしっかりと説明を受け、治療をしなかったらどうなるのかという場合についても話し合っておいた方がよいでしょう。どうしたら愛犬にとって良い選択肢となるのかをしっかり家族で話し合いましょう。犬の脳腫瘍の治療方法は、投薬に加えて外科手術、抗ガン剤の投与、放射線治療といった「積極的な治療」と投薬によって症状を抑えながら、自宅で愛犬の介護をする「保存療法(緩和ケア)」があります。脳腫瘍の中でも、犬の髄膜腫は、早期に発見でき、外科手術を行って腫瘍を切除することで、日常の生活を維持させることができるケースもあります。しかし、多くの脳腫瘍は、手術自体が難しいことに加え、合併症などのリスクが高く、実際には手術ができないことが多いです。脳腫瘍を取り除く手術ができないケースには、延命を目的とした放射線治療もあります。放射線を局所的に腫瘍に照射する治療になりますが、毎回全身麻酔下で行うことと、照射後に治療を行なった部分に脱毛が起こること、皮膚炎などの副作用も起こります。治療には、愛犬への負担や高額な治療費用などについても獣医師との確認が必要です。脳腫瘍の種類によっては、化学療法(抗がん剤治療)を行い、効果が認められるケースもあります。ただし、抗がん剤を使用した治療は、血液脳関門により脳に薬剤が浸透しにくく、効果が得られない上に、副作用が認められることも多く、犬の体力などから考え、治療方法が適しているのかを、獣医師と話し合う必要があります。脳腫瘍の治療には、積極的な治療を行わずに、お家でゆっくり過ごす「保存療法(緩和ケア)」を選ぶ方法もあります。投薬をしながら愛犬の生活の質(QOL)を保って、最期の時まで余命を過ごす治療となりますが、病状が進行すると自宅での介護が必要となります。脳腫瘍の犬の介護を行う場合には、症状が進行すると、家の中で高い頻度で痙攣発作を起こすことも想定されます。愛犬が脳腫瘍と診断されたら、気をつけることは、痙攣発作が起きたときに、愛犬が室内の障害物にぶつかったり、階段から転落をしないように気をつける必要があります。犬の脳腫瘍は、進行性のため、早期に発見し、治療を開始する必要がありますが、症状もわかりにくいので、飼い主さんの気が付いた時でさえ症状が進行している可能性が高いです。監修:いぬのきもち獣医師相談室 犬の脳腫瘍という病気は、決して珍しくはありません。しかし、脳の中は見えない場所であり、犬は人のように無麻酔で気軽に画像検査を受けられないので、発見しにくいという問題があります。脳腫瘍の症状は、進行するまでわかりにくく、他の脳の病気との区別も難しいです。今回は、犬の脳腫瘍の症状や進行した際の余命などを解説したいと思います。脳腫瘍には、脳腫瘍は、中~高年齢の犬に発生しやすい病気です。 また、最初から脳に発生する原発性脳腫瘍の種類にはなどがあります。このうち、犬の脳腫瘍の中で最も多いのは転移性腫瘍では、少し話が逸れますが、人のがんの転移においても、それぞれの臓器のがんと関係が深い、転移しやすい臓器というものがあります。これは医療者の間ではよく知られていることで、胃がんは卵巣転移やリンパ節転移しやすく、特に左鎖骨上リンパ節転移は、ウィルヒョウ転移と別名で呼ばれ、有名です。また、肺がんやはり脳に転移しやすいとことがよく知られています。脳そのものは柔らかく損傷しやすい部分であるために、脳腫瘍ができると、それがたとえ良性腫瘍であったとしても、外側には頭蓋骨があるために頭蓋骨の内側でしか成長することはできません。腫瘍が大きくなるにつれ、脳は次第に押しやられるようにして圧迫されるようになります。脳はとても繊細で、その部位によって支配している神経や役割が異なっています。つまり、脳腫瘍がどこにできているかによって、影響を受ける神経も変わり、その結果、現れる症状もその部位の支配する脳腫瘍は、その発生場所に関係した症状が現れる為に、実に様々な症状が考えられます。その中で、共通してもっとも多い症状に、脳に由来する痙攣発作は、いわゆるてんかん発作と同様のものですが、原因不明の特発性てんかんとは違い、脳腫瘍というはっきりした原因があります。てんかん発作は、若年齢の犬であれば特発性てんかん、または脳炎による可能性が高いですが、犬が高齢になるにつれて、脳腫瘍が原因になっている可能性も高くなります。しかし、脳の病気の症状は共通しているものが多いために、何の病気かの判別はかなり難しくなります。それまでてんかん発作など起こしたことのなかった犬が、高齢になって発作の症状が出るようになった時には、脳腫瘍ができている可能性も考えた方が良いです。若い年齢の時から特発性てんかんを持っていて、発作を薬でコントロールしてきた犬が、高齢になって再び発作の頻度が増えてきたとしたら、その犬には特発性てんかんの治療を長年している犬の場合は特に、その発作の原因が別にあるとは考えず、脳腫瘍を見逃してしまう危険もあるので注意しなければなりません。脳腫瘍は、どの犬種にも発生する病気です。しかし、好発犬種というのも一応あるようです。 脳腫瘍の進行は、一般的には比較的ゆっくりであるとされています。しかし、症状が現れるまでの進行がゆっくりだったとしても、その間はそもそもそして、病気が進行して初めて症状に気づき、その時点で脳腫瘍と診断されてからの進行の早さには、飼い主さんも戸惑うことになるかもしれません。犬の脳腫瘍は、珍しい病気ではないものの、犬は人と違ってCT検査やMRI検査などの画像検査を受けるハードルが高く、早期診断に行き着くのは容易なことではありません。てんかんのようなけいれん発作が表れたとしても、全ての犬の飼い主が、MRI検査などによる脳内の精査を希望するわけではなく、また、積極的に画像検査を勧めない方針の獣医師もいます。そのけいれん発作を特発性てんかんと見なして、とりあえずは発作を抑える内服治療を開始してみるということは、よくあることです。しかし、脳腫瘍は明らかな脳内の異常であり、腫瘍によって脳が圧迫されるという物理的ではっきりとした原因によって発作の症状が起こります。けいれんを抑える薬だけでは発作を抑えきれず、コントロールすることは困難です。抗てんかん薬が効かないけいれん発作として、脳内の様子を知る為にようやく画像検査にたどり着いた時、脳腫瘍は進行しているかもしれません。転移性の脳腫瘍の場合は、脳腫瘍と判明したとしても、先に発生していたであろう他の臓器のがんがすでに進行している可能性はあります。脳腫瘍の症状をそれと似ている脳の病気のてんかんや脳炎と判別するためには、やはりもちろん、身体検査、神経学的検査、血液検査など、その前にできるあらゆるスクリーニング検査もおこなうのは当然ですが、最終的な診断は、画像所見がなければ不可能なのです。脳の画像上で何も異常が認められない場合に限り、その症状は特発性てんかんによるものという診断になると思います。しかし、画像で異常が見られる場合、次にその異常所見は何であるのか、脳炎なのか脳腫瘍なのか、あるいは脳血管の病気(出血や梗塞など)であるか、という詳しい診断がなされることになります。脳腫瘍は、がんの転移ではなく原発性腫瘍であり、しかも早期のものであれば、根治治療も期待できる病気です。脳腫瘍がそのまわりの組織に浸潤する(染みわたるように広がる)ことなく、腫瘍だけを切除することができる状態ならば、手術で腫瘍を取り除きさえすれば病気を完治させることができます。ただ、他の臓器のがんが転移した転移性脳腫瘍の場合は、転移=がんが進行しているということの表れであるため、積極的な手術の適応にはなりません。また、脳外科手術が可能かどうかは、どんなに、治る可能性のある早期の原発性脳腫瘍であっても、それが脳の深部にできている場合は、手術そのものが生命を脅かすリスクが高すぎて、手術することはできなくなります。それに脳外科手術はどこの病院でもできる手術ではありません。脳外科手術の実績のある、高度医療をおこなう病院を受診し、改めて検査を行い、手術による治療が可能なのかが検討されることになります。仮に、脳腫瘍を切除できたとしても、開頭して脳を扱うということは、命にかかわらなくともそれだけでリスクが高いものです。脳はとても繊細な組織です。手術によって、腫瘍の周囲の組織にも何らかの影響が出るかもしれないこと、つまりは脳腫瘍が手術困難な状態であれば、脳には、抗がん剤はそこを通過しにくく、脳腫瘍の種類によってはあまり効果が期待できません。犬の脳腫瘍でもっとも多いとされる髄膜腫では、抗がん剤はほとんど使用されることはないようです。放射線治療は、手術と併用して行うこともあれば、手術が困難な時に、放射線単独での治療として行うこともあります。しかし、このような治療は犬の体力を奪うものでもあり、高い効果が期待できるのであれば、もちろん積極的に進めた方がよい場合もあります。しかし、脳腫瘍が進行していて、その治療をすることがただ犬の体力を奪って犬の生活の質を落とすようなことになるのであれば、対症的な治療のみに留めるしかないこともあります。対症的な治療というのは、発作に対する治療や、むくみや炎症などの症状を抑える治療のことです。そのような治療には、主に脳腫瘍は、その病気が判明したと同時に全身状態や基礎体力によっても違ってはくるでしょうが、対症的な治療でわずかでも延命が可能だったとしても、その症状は犬に大きな苦痛を与えるため、場合によってはいずれの場合も、どのように対応するかは大変辛いことですが、最終的には飼い主さんが選択しなければなりません。 症状が現れたところで、他の病気とも区別がつきにくく、また、すでに進行してからしか症状が出現しない可能性も高いです。何らかの症状に気づいたら、できるだけ早く検査に結びつけてあげて下さい。そして、治療が期待ができないシビアな状態であってとしても、犬にとって何がベストかは飼い主さんにしかわかりません。犬は、あなたが何を選択しても、あなたの想いを信じていると思います。最後まで読んで頂いてありがとうございました。  このサイトの管理人で執筆者。人相手の看護師。犬を愛しています。臨床に携わる立場から、犬の病気も人の病気に例えてわかりやすくマニアックに解説しています。このサイトの管理人で執筆者。人相手の看護師。犬を愛しています。臨床に携わる立場から、犬の病気も人の病気に例えてわかりやすくマニアックに解説しています。