© IWJ Independent Web Journal 北海道新幹線トンネル残土問題 2018年4月27日、菊地葉子道議は道議団や札幌・小樽の共産党市議団とともに、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備機構(鉄道・運輸機構)北海道新幹線建設局から北海道新幹線トンネル掘削工事等についてヒアリングを行いました。 リニアが新幹線より優れているのは「高速性」のみ!? 地下水の汚染、水源の枯渇、地盤沈下、地価の下落、建築制限――問題が山積するリニア計画、大深度法が適用された外環道の問題に市民・議員らが警鐘 2015.2.3 ?』と批判的な社説を出しました。しかし、その声は次第にトーンダウンしていきました。これは、不自然です」樫田「2011年9月27日からJR東海は住民説明会を58回やりましたが、本当に酷いものでした。質問は1人3問までで、3つの質問を同時に発しなければならないのです。1問投げてその回答について追加質問、というやり取りが禁じられ、それを要求した住民男性はマイクを取り上げられました。住民は、質問ができない、と非常に怒っていました。細部を聞こうとしても、再質問ができないのです。 説明会では、電磁波に関するデータ、河川の水枯れの実態、膨大な残土の処理方法など、具体的な内容は何も明らかにされませんでした」岩上「手続きだけを『粛々』とやり、住民だけが不満を募らせても訴えるところがありません。マスコミが報じないからですね。これは、原発事故後の東電の対応を彷彿とさせます」樫田「2013年10月14日の長野県大鹿村の説明会は特にひどいものでした。質問の手があがっているのに、閉会宣言が行われました。JR東海の職員は、詰め寄る住民に『名前は?』と聞かれても、『スタッフです』としか答えませんでした。 この説明会は、2014年に国交省が認可する前の、最後の説明会でした。にも関わらず、住民の延長要請を無視し、幹部は裏口から帰っていきました。 86%がトンネルを占めるリニアで、仮に豪雪の南アルプスで緊急停車したら、どうやって1000人もの乗客を誘導するのでしょうか? これを説明会で質問したら、JR東海は『お客様同士で助け合っていただきます』と回答しました」 岩上「事故時の脱出ルートは、十分にあるのでしょうか?」樫田「都市部にはエレベーターがありますが、山間部では地下1400mの深さのため、山腹に出れる脱出口があります。JR東海は、この脱出口を5kmおきに設置する、と説明しています」岩上「恐ろしいのは、トンネル火災ですよね」樫田「こうした事故時のシミュレーションを、JR東海は出しません。どういう事故を想定し、どういう体制でどのように対処するのか、ということを公表しないのです」岩上「直近では、4月に青函トンネルで発煙事故がありました」樫田「この時は非常口の近くで止まったのが幸いした。トンネルの真ん中で停車したらどうなっていたか。2.4kmの脱出の道のりにも、5~6時間かかっているのです」樫田「1997年4月、山梨県でリニア走行実験が始まると、周辺の河川や沢が次々と枯れ始めました。現地取材をしましたが、水源が完全に枯れてしまっていました。これには、驚きました。 2009年、山梨県笛吹市御坂町では、2008年に実験線の延伸工事が始まると、町の一級河川・天川(てがわ)が枯れました。トンネル内で異常出水が起こり、JR東海もさすがに因果関係を認めて、現在は出水をポンプで天川に戻しています。 異常出水は、人が流されてしまうほどのものもあります。2011年夏、上野原市無生野地区の簡易水源であり、尺サイズのイワナやヤマメが泳いでいた『棚の入沢(たなのいりさわ)』が枯れました。また、笛吹市役所によると、『井戸が枯れた』との連絡が数十件寄せられたそうです。 ここは、地域の人たちの簡易水源でした。JR東海は補償として井戸を掘り、電気で水を引きました。しかし、この補償期間は国交省の通知に従い『30年間のみ』と通達されたのです。30年経ったら自分たちでまかなえ、というわけです。 2013年の『環境評価準備書』では、大井川の流量が最大毎秒2トンも減ると予測されました。これに対し、静岡県の人たちはたいへん驚きました。静岡県は唯一リニアの駅もなく、11km通るだけなのに。靜岡のお茶産業に大きく影響が出ます。 太平洋側の7市2町に独自の水源は乏しく、ほぼすべてを大井川に頼っています。中には、100%大井川に頼っているという自治体もあります。しかしJR東海は、リニア沿線に位置しないという理由で、これらの自治体への説明を行っていないのです」岩上「これも、原発の問題と似通っていますね。立地地域は狭く限定されるが、いざ事故が起きると、広範囲に影響する、ということですね」樫田「環境への影響という点では、他にも、残土の問題があります。JR東海は、360万㎥の残土を、大井川源流部に6カ所。標高2000mの稜線に1カ所置く予定です。この残土を運ぶためにトンネルを掘り、残土を山の上に積み上げるための工事までしています。これには、静岡県知事を含め、専門家も大反対しました。山の上の残土が崩れたらどうするのか、また残土の重みで山自体が崩壊したらどうするのか、といった声があがりました。 残土は全体で5800万㎥で、諏訪湖とほぼ同じ容量です。さらに、リニアの実験線で排出された建設残土のうち、160万㎥が山梨県笛吹市境川町の谷を埋める事態になりました。しかし現在のところ、用途は未定です。 JR東海は、住民説明会において、この残土について①JRの事業としてリニア建設で使う、②自治体の事業として処分する、③処分場を造る、と、3つの方法を説明していますが、それらが具体的にどのようなものなのか、説明はされていません。 5800万㎥のうち、処分が確定しているのは2割です。8割は、処分先も決まっていません。こうした諸々の問題について、国会議員が動き出したのは2014年になってからのこと。頑張って欲しいですが、ちょっと遅すぎますね」樫田「神奈川県相模原市緑区鳥屋(とや)には、11の自治会があるのですが、ここには幅400メートル、長さ2キロにもわたる車両基地が建設されます。自治会の一つ谷戸自治会はそれにより、移転する人としない人とに分断されてしまいます。 これはまさに、降って湧いたような話です。住民にはかったということもありません。自治会長さんですら知りませんでした。ただ、ヘリが低空飛行したり、知らない人が『生物調査です』と山に入っていく姿は目撃されていたようです。 移転せずにすむ人も、車両基地の高さ30メートルという壁に日照や景色を遮られ、近所付き合いを絶たれて暮らすことになります。分断される片側(残される側)には2家族しかおらず、それでどうやってご近所活動をするのでしょうか。 しかも、分断される側の住民の移転費をJR東海が出すかどうか不透明なのです。同様の問題は、やはり車両基地ができる岐阜県中津川市でも起きています。ここは東西にリニアが通り、連動して南北に高速道路ができ、地域が縦横に分断されます」岩上「リニアに関しては、地震の影響も指摘されていますね。南アルプスの主稜線の30キロから40キロ直下まで、フィリピン海洋プレートが食い込んでいます。また、南海トラフ震源域も、南アルプスの南部にまで伸びています。大地震が起これば、トンネルが崩落する危険性もある、ということなのですが」樫田「そもそもJR東海は、東海道新幹線が使えなくなった時のバイパスとしてのリニアだと主張してきました。『地下にいけばいくほど地震に強くなる』、というわけです。しかし、南アルプスは年間3~4mm、世界最速のスピードでせり上がっています。しかし、JR東海は『大丈夫だ』と一方的に説明するだけです。 2011年5月、つまり3.11からわずか2カ月後、国交省の『交通政策審議会』で、この地震について話し合いが行われました。しかし、その時間は、なんと15分。形式的に議論し、『大丈夫だ』と結論づけたのです。この審議会の座長は、八ッ場ダムの審議会座長を務めた人物でした」岩上「JR東海は、2045年の大阪開通以後、リニアと東海道新幹線をあわせると、輸送実績は1.5倍以上になると予測しています。しかし、互いに客を奪い合うので、これはありえないのではないでしょうか。しかも、今後30年で、日本の人口は2割減ると予測されているのです。客の奪い合いが起こり、人口が減少しているのに、なぜ、輸送実績が増えると言えるのでしょうか?」樫田「今まで飛行機やバスを使っていた人が、これからはリニアを使うようになる、という予測です。しかし、値段にしても、今の新幹線より高くなります」岩上「ご著書の中で、リニアは『速いけど、早くない』とご指摘されていますね。品川駅から名古屋駅まで40分と、確かにスピードは速いと思いますが、リニア品川駅とリニア名古屋駅は、地下40メートル以深にある大深度駅となるため、従来の新幹線のホームに行くより、5分程度時間がかかる、ということですね」樫田「JR東京駅からJR大阪駅まで行く場合、リニアと東海道新幹線では、21分しか違わないのです。その21分のために、乗客が高価なリニアに乗るでしょうか?