ポリープは一般的に知られた用語ですが、そもそもポリープとはどのようなものでしょうか。ポリープは体内の様々な部位にできますが、ここでは各ポリープについて、また癌化しやすいといわれる胃ポリープと大腸ポリープを中心に説明します。  目次ポリープとは、臓器の粘膜の上に異常に増殖してできた腫れ物のことです。米粒ほどの大きさものから、イボ状やキノコのような形のものまであります。 基本的に良性の隆起性病変で、小さいポリープはあまり問題がありませんが、大きくなってねじれや炎症が起きると痛みや出血を伴います。 ポリープは胃や大腸など、管状や袋状の臓器にできやすいといわれています。 声帯にできる呼吸器系の「声帯ポリープ」、消化器系の臓器にできる「大腸ポリープ」「胃ポリープ」、女性特有の「子宮頸管ポリープ」「子宮内膜ポリープ」などがあります。 遺伝子変異によってできるものを「過形成性ポリープ」、遺伝子の変化ではなく炎症が原因でできるものを「炎症性ポリープ」といいます。  ポリープの中でも癌化する可能性が高いとされる大腸ポリープ、胃ポリープについて詳しく説明します。 大腸ポリープは大きく腫瘍性と非腫瘍性に分類され、腫瘍性のうち悪性のものがいわゆる「癌」です。良性のものは腺腫(せんしゅ)と呼ばれ、大腸ポリープの約8割を占めるといわれていますが、何らかの原因により癌化することがあります。 非腫瘍性のものは炎症が起きる病気から発生する炎症性ポリープや、高齢になるとなりやすい過形成性ポリープなどがあります。しかしいずれも癌化することはほとんどありません。   腫瘍性のほとんどは良性の 腺腫が癌になるかどうかのポイントは大きさです。腺腫の直径が5mm を超えると一部癌化したものが発生します。さらに10mmを超えると、急激に癌を含む可能性が高くなってきます。 腺腫はある一定期間、同じ大きさを維持した後、ある時期から成長し始め、また一定期間その大きさを維持する、というように段階的に増大していきます。 癌は複数の遺伝子の異常が積み重なって発症します。一つの遺伝子が傷つき腺腫が増大するスピードが速くなり、また次の遺伝子が傷つくとさらに増大が起るというように、遺伝子が変異を起こしながら正常の組織から腺腫、さらに癌へと進展していくと予想されています。しかし、腺腫が小さい段階で将来的に大きくなるかどうかを判断することは困難です。 胃ポリープとは、胃粘膜上皮に発生する基本的に良性で隆起性病変のことです。広い意味で、腺腫、粘膜下腫瘍、癌など胃の中に隆起した病変の総称をいうこともあります。 主に胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、それ以外で特殊型(炎症性、症候性、家族性)のように分類されます。「善玉コレステロール」、「悪玉コレステロール」と同じように、胃底腺ポリープは「善玉」、過形成性ポリープは「悪玉」のように考えられます。   大きさ:2~3mmの米粒大数:数個から多数個色:胃の周囲粘膜と同じ(薄桃色)癌化:発生例もありますがその頻度はきわめて低いです。その他:ヘリコバクター・ピロリは陰性で、基本的に切除など処置の必要はなく、自然消滅することもあります。中年の女性に多いです。 大きさ:大小さまざま数:1個から数個癌化:稀にありその他:ヘリコバクター・ピロリは高確率で陽性で、萎縮性胃炎など様々な病状を併発することもあります。 大きさ:通常2cm以下。2cm以上になると問題あり色:褐色または灰白色癌化:ある。生検組織診断基準(Group分類)では、胃の上皮性良性腫瘍として扱われ、真ん中のGroup3の「腺腫」で良性と悪性の境界性。Groupは1 ~5まであり、Group1は正常組織、Group5は癌。 その他:前癌病変と考えられ、2cm以上になると約半数は癌を合併する可能性があります。そのため腺腫性ポリープと診断された場合、1年に1回は定期的観察を行う必要があります。胃の癌化とともに、離れた部位で癌が合併する可能性も考えられます。2cm以上になり癌の合併が疑われる場合は、切除することが多いですが、大きさにかかわらず予後は良好です。高齢の男性に多いポリープです。  便潜血検査(2日法)は便に血液が混ざっているかをみる検査で、大腸からの出血があると陽性になります。簡便で低コストなこともあり、一般の健康診断で普及しています。大腸癌に対する感度(癌がある場合、陽性になる確率)は80%程度ですが、ポリープに対する感度は10%~50%と研究によりばらつきがあるといわれます。そのため痔などでも陽性になり、陰性の場合でも内視鏡検査でポリープや早期癌が発見されることも多くあります。便潜血検査で陽性になった場合、腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受ける必要があります。   大腸の中を直接観察できるため、かつて行われていたバリウム検査では発見が難しい小さなポリープだけでなく、平らな癌も発見することができます。また、検査中にポリープや初期の大腸癌を取り除くことができます。 検査前に大腸内を空っぽにする必要があるため、約2リットルの下剤を飲まなければなりません。次にベッドに横になり鎮痛剤を注射した後、肛門から内視鏡を挿入します。かつては「大腸内視鏡検査は痛い・苦しい」といわれていましたが、検査機器や専門医の検査技術が大きく進歩したことにより、苦痛がなく行えるようになってきました。検査は人によりますが20分程度で終了します。 一般的な健康診断の胃癌検診で行われるバリウム検査で、胃ポリープや慢性胃炎などの病状を発見することができます。X線でバリウムが溜まる箇所は白く、溜まらない箇所は黒く映るのでそのコントラストを利用し胃の粘膜の凹凸に乱れがないかを判断します。 バリウム検査で異常が発見された場合、内視鏡による精密検査を行う必要があります。バリウム検査が苦痛で最初から内視鏡検査を受ける人もいます。口から挿入する「経口内視鏡」、鼻から入れる「経鼻内視鏡」により胃だけでなく食道や十二指腸の内部を観察するため、ポリープや潰瘍、ピロリ菌感染症などの病気を発見できます。  青い色素を病変に散布し内視鏡で観察する「色素内視鏡検査」という方法や、特殊な光を当てることでポリープ表面の構造を見やすくし、病変を拡大することである程度の鑑別が可能です。 治療が必要と判断された場合、病変を切除し組織を顕微鏡で確認する「病理組織検査」を行います。最終的に良性の腺腫か、または癌を含む病変(腺腫内癌)かどうかを診断します。   大腸、胃ともに内視鏡検査内でほとんどのポリープを切除することができます。内視鏡検査でみつかったらすぐに取ることができ、開腹手術に比べ体への負担がとても少ないです。              ・一般的に6mm以上の良性のポリープ・リンパ節への転移の可能性がほとんどなく内視鏡を使って一括で切除できる癌・5mm以下の良性腫瘍でも、平坦あるいはへこんだ形のもの、癌との区別が難しいもの・白色の5mm以下の多発するポリープ(過形成性ポリープ)は経過観察で問題なし ・腺腫性ポリープ:2cm以上に増大し、または癌の発症が疑われる場合・過形成性ポリープ:ヘリコバクター・ピロリが陽性ならば、まずピロリを除菌することにより、消失することがある。除菌後1年経過しても消失せず大きさが2cm以上ある場合や、ピロリ陰性で大きさが2cm以上ある場合などは内視鏡的切除が検討されます 「ポリペクトミー」「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」などの方法があります。また近年、10mm程度のポリープに対し、熱を使わないコールドポリペクトミーという手術が行われ始めています。ポリープの大きさや、癌化の可能性により外科手術が選択される場合もあります 内視鏡で取れないほどの大きなポリープの場合や、大腸ポリープで大腸のヒダなど屈曲した部位で内視鏡では切除できない場合など、開腹手術が選択されます。 また、内視鏡で切除した病変を顕微鏡で調べ、癌が粘膜下層まで深く入り込んでいることがわかった場合は、リンパ節への転移が約10%生じるといわれています。さまざまな条件を考慮し、リンパ節を取り除く追加の外科手術を行うこともあります。  ポリープは多くのケースが内視鏡検査による手術で切除することができ、癌化しない非腫瘍性のものです。そのため過剰に心配することは避けるべきですが、癌化することを極力避けるための体つくりは大事です。規則正しい生活、バランスがよい食事、適度な運動により体内の免疫をアップさせることは、健康を維持することで必要なことはよく知られています。 免疫療法は、癌に罹患してからの治療としてだけではなく、癌を予防する体内環境作りとしても大変有用です。ポリープの将来的な癌化を防ぐ選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。  ポリープはさまざまな箇所に頻繁にできる人もいますが、いずれの病変も早期発見・治療ができれば治癒することができる可能性が高いと考えられています。ポリープと診断され治療が完了した場合でも、医療機関では定期的な内視鏡検査を受けることを推奨しています。 出展:Japan Polyp Study日本消化器病学会ガイドラインhttp://www.onaka-kenko.com/various-illnesses/stomach/stomach_02.html一般社団法人日本消化器内視鏡学会医療ライター。健康・医療分野を中心に執筆するライターです。がんに打ち勝つための免疫療法の取り入れ方を専門家が無料でお教えします。▼いますぐ内容をご確認頂きたい方はこちら▼

大腸にできる「いぼ」の様な隆起性の病変を大腸ポリープといいます。いろいろな形があり、大きさも1mm程度の小さいものから数cmまでと様々です。ポリープの種類には、非腫瘍性のものと、腫瘍性のものがあります。非腫瘍性のものには、炎症性や、過形成性といわれるものがあります。腫瘍性のものには、大腸ポリープのうち8割以上を占めるとされる腺腫やいわゆる「がん」が含まれます。(腫瘍性のものの中には、隆起性の病変だけでなく、陥没した腺腫や、陥凹型のがんも存在しています)大腸がんの危険因子として、以下のことが言われています。特に、血の繋がった親、兄弟、子供に大腸がんになった人がいると、そうでない人に比べて2~3倍大腸がんになりやすいといわれています。一方で、予防法としては、適度な運動以外には大腸がん予防に有効な方法はまだ証明されていません(ちなみに食物繊維・果物・野菜などは、予防する可能性があるとはいわれていますが、まだ証明はされていません)。そのため、大腸ポリープ・早期大腸がんはほとんど無症状です。そのため、無症状な大腸ポリープ・がんの検査法として、近年①便潜血検査、②大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が主に行われています。 ほとんどの大腸ポリープは大腸内視鏡検査中に切除することができます。〒243-0814 厚木市妻田南1-16-36厚木市・本厚木の内科・胃腸科・内視鏡検査 © 厚木胃腸科医院診察・検査のご予約は厚木胃腸科医院まで診察・検査のご予約は厚木胃腸科医院まで歯のご相談は厚木妻田南歯科医院まで 室 圭(愛知県がんセンター 副院長/薬物療法部長/外来化学療法センター長) 5,830円(本体5,300円+税)できるゾ 読めるゾ 腹部エコー<第3版> 【Q】胃や大腸の過形成ポリープとは,遺伝子変異などを伴う腫瘍なのでしょうか。その病理的にあくまで「過形成」,つまり正常細胞の応答として細胞増殖が起こるという考えでよいのでしょうか。順天堂大学大学院・八尾隆史先生にご解説をお願いします。 (北海道 K) 【A】病理学的に,過形成とは細胞数の増加による組織あるいは臓器容積の増大であり,非腫瘍性変化です。胃や大腸の過形成ポリープは細胞の増加を伴い隆起を形成し,細胞増殖が盛んなため増殖細胞は核腫大を示しますが,領域を持った異型は示さず,正常粘膜と同様な細胞分化を保持していることから,非腫瘍性病変と考えられてきました。 電子コンテンツサービスのお知らせ臨床情報、記事、論文は会員向けにパッケージ化された電子コンテンツとしてもご利用いただけます。Webオリジナルコンテンツや電子書籍も続々登場 2020.07.09成人腸重積……その先にあるものは?[画像診断道場~実はこうだった(162)]2020.07.09兎糞状の硬便を伴う腸内乾燥性便秘×潤腸湯[漢方スッキリ方程式(40)]2020.07.09好酸球性胃腸炎[私の治療]2020.07.02虚血性腸管障害(虚血性大腸炎を除く)[私の治療]2020.06.25大腸憩室炎? それとも…[画像診断道場~実はこうだった(161)]2020.06.21第21回日本神経消化器病学会を振り返って2020.06.20早期食道癌(内視鏡治療)[私の治療]2020.06.19感染性腹膜炎(SBP,結核など)[私の治療]2020.06.19胃前庭部毛細血管拡張症[私の治療]2020.06.16バレット食道[私の治療]2020.06.15十二指腸ポリープ,腺腫[私の治療]2020.06.11逆流性食道炎患者の食道胃接合部腫瘍[画像診断道場~実はこうだった(160)]2020.06.02消化管出血を伴う膵神経内分泌腫瘍[難渋症例から学ぶ診療のエッセンス(85)]2020.05.28腹痛を訴えた際に撮影した胸部単純X線写真[画像診断道場~実はこうだった(159)]2020.05.25早期大腸癌(内視鏡治療)[私の治療]2020.05.25胃・十二指腸憩室[私の治療]2020.05.21胃粘膜下腫瘍……それとも?[画像診断道場~実はこうだった(158)]2020.05.19プロトンポンプ阻害薬と関連する有害事象2020.05.14早期胃癌(内視鏡治療)[私の治療]2020.05.04悪性腹膜中皮腫[私の治療]2020.04.30(GERD+下痢型IBS)×半夏瀉心湯[漢方スッキリ方程式(38)]jmedmook69 あなたも名医!日常診療でめ… 大腸ポリープには、『過誤腫性ポリープ』、『炎症性ポリープ』、『過形成性ポリープ』など良性のものもあります。 B CQ5-1 内視鏡切除の適応となる大腸腺腫の大きさは? CQ5-2 過形成性ポリープの取り扱いは? CQ5-3 大腸鋸歯状病変に対する内視鏡診断のポイントと治療適応は? CQ5-4 LST(laterally spreading tumor)の治療方針は? CQ5-5 cold snare polypectomy の適応病変は? 2018-11-27 軽部友明(軽部病院) 7,920円(本体7,200円+税)jmedmook65 【電子版付】あなたも名医!… 横江正道(名古屋第二赤十字病院第二総合内科部長) 4,620円(本体4,200円+税)胆膵EUSアトラス【電子版付】 山口武人(千葉県がんセンター 病院長) 10,450円(本体9,500円+税)かかりつけ医のための便秘・便失禁診療Q&A【電子… §135-8550@“Œ‹ž“s]“Œ‹æ—L–¾3-8-31(—ÕŠC•›“sS)Copyright © 2020 The Cancer Institute Hospital Of JFCR. 過形成ポリープの正体 始めに 大腸ポリープは大きく分けて二つに分類されます。腺腫と過形成ポリープです。大腸癌は腺腫から発生する、過形成ポリープは癌化しない無害なもので治療せずに放置でよいというのが過去の常識でした。 腺腫と過形成ポリープです。大腸癌は腺腫から発生する、過形成ポリープは癌化しない無害なもので治療せずに放置でよいというのが過去の常識でした。この試験では原則として「全ての腺腫を切除し、過形成は放置」という方針でおこなわれました。 過形成性ポリープは概ね赤色で胃のどの部位にもみられ、大きさは大小様々で、単発の場合もあれば複数みられることもあります。ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)陽性(感染している)で萎縮性胃炎のある胃に発生します。 過形成ポリープ. 花田敬士(JA尾道総合病院消化器内科診療部長) 3,850円(本体3,500円+税)大腸内視鏡挿入術 大腸にできる「いぼ」のような病変を大腸ポリープといい、大腸がんの9割は大腸ポリープが移行したものと言われています。年齢や肥満、喫煙などの生活習慣があり、40歳以上の方は定期的に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けられることをお薦めしています。 All rights reserved. 中島 淳(横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室 主任教授) 4,950円(本体4,500円+税)消化器がん化学療法レジメンブック<第4版>【電子… 大腸の過形成ポリープは,直腸に好発する数mm大の扁平隆起であり,組織学的には鋸歯状構造を示しながら延長した陰窩上皮からなる病変です。 従来は,大腸の過形成ポリープは癌化の危険性のない非腫瘍性病変とされていました(文献2) 。