血管石灰化(特に冠動脈石灰化)は、一般人ならびに透析患者において心血管イベント、心血管死亡の強力な独立関連因子である(文献1, 2)。透析患者ではリン吸着薬の介入試験(炭酸カルシウムと炭酸ランタンの比較)により、炭酸カルシウム群と比較し、炭酸ランタン群で有意に血管石灰化の進展が抑制されることがメタ解析結果も含めて示されている(文献3-7)。 このように血液中で増加したハイドロキシアパタイトは、骨や歯以外の、主に関節を中心とした筋肉や肺、皮膚、心臓そして血管など、通常では沈着しないところにも沈着して「石灰化」を起こします。 これを「異所性石灰化」といいます。 例えば、透析患者さんの死亡原因をみてみると、透析患者さん全体の約3分の1が心不全や心筋梗塞といった心臓病で亡くなっています。虚血性心疾患は、心臓の血管が動脈硬化(どうみゃくこうか)によりせまくなることによ って起こります。動脈硬化ができていても、はっきりとした自覚症状がない場合もあります。しかし、動脈硬化部分が大きくなったり、やぶれたりすると、そこで血管がつまってしまい、そこから先に血液が流れなくなってしまいます。血液が流れなくなると酸素が届かなくなり、狭心症や心筋梗塞の発作が起こります。また、心筋血流シンチグラフィでは、安静にして撮像する方法(安静心筋シンチグラフィ)と、血流の少ない場所をよりわかりやすくするために、運動や薬によって心臓に負担をかけて調べる方法(負荷心筋血流シンチグラフィ)があります。2つめは、心臓に酸素や栄養を送っている血管(冠動脈(かんどうみゃく))がつまってしまう「虚血性心疾患」です。透析患者さんは、はっきりとした症状がなくても虚血性心疾患にかかっている場合が多く、実際、約6割の方が虚血性心疾患にかかっていることです。心筋シンチグラフィでは、微量の放射線を出す物質を含んだ薬(放射性医薬品)を使います。この薬は血管を通って心臓の筋肉(心筋)に集まり、そこで放射線の信号を出します。その信号を専用のカメラが受け取り、画像にするのです。1つめは、腎臓が働かないために、体内をめぐる血液の量が増加して、心臓に余分な負担がかかることです。Copyright © Nihon Medi-Physics Co.,Ltd. 透析患者の体内のリンやカルシウムのバランスが崩れると、血管が石灰化して硬くなります。硬くなった血管は伸縮性に欠け、血圧の調整が難しくなり、血圧が急に上がったり下がったりすることで血管がボロボロになってしまうのです。そうして脆くなった血管は詰まりやすくなり、その結果心不全や心筋梗塞のリスクをぐんと上げてしまいます。 透析患者を対象とした研究では、弁石灰化合併患者が非合併患者に比し心血管イベントが多く発生することが報告されている(文献17)。また、弁石灰化の有無を大動脈弁、僧房弁と分けて(文献18)、ともになしの0点から、どちらかありの1点、ともにありの2点と3段階とした定量評価を行っている研究もある(文 … All Rights Reserved.また、透析を始めてから最初の1年間は、特に心筋梗塞が起こりやすいことがわかっています。ある調査では、透析患者さんで虚血性心疾患と診断された人のうち、症状がないと答えた人は半数にものぼりました。透析患者さんの心臓が悪くなる原因は、大きく分けて2つあります。透析と心臓にどんな関係があるの?-と不思議に感じる方もいらっしゃると思います。心筋シンチグラフィには、主に血流を調べる「心筋血流シンチグラフィ」と、心臓の筋肉(心筋)の代謝を調べる「心筋代謝シンチグラフ ィ」があります。実は、透析を受けている患者さんにとって、心臓病はとても重要な病気なのです。心筋シンチグラフィの画像を見ると、血流の悪くなっている場所、心臓の筋肉(心筋)の様子、心臓のポンプ機能の働き具合などがわかります。1つめも2つめも、どちらもしだいに心臓を疲れさせてしまいます。心臓の疲労-それが死亡原因の中で最も多い「心不全」と呼ばれる病気です。透析を長く続けている方も、始めてから間もない方も、自分の心臓の状態を知るために、きちんと検査を受けることが大切です。心筋シンチグラフィで使われる放射線の量はほんのわずか。胃のレントゲンと同じくらいで、CT検査より少ない量です。また、体内に入 った薬は、数日で消えてしまいます。心臓の検査にはそれぞれメリットとデメリットがありますが、身体への負担が少なく安全であること、透析患者さんに多い血管の石灰化にも対応できることなどから、心筋シンチグラフィは透析患者さんに勧められる検査です。心臓の検査では、まず、一般的な健康診断でも行う聴診や心電図を行います。これらで異常がみられたときは、心エコー、CT、心筋シンチグラフィなどの画像診断で、心臓の状態や機能を詳しく調べます。心臓病の可能性が高いときは、足の付け根や腕、手首の血管から心臓へ細い管(カテーテル)を入れ、どの部分に動脈硬化ができて細くなっているかを調べる冠動脈造影を行います。 維持透析患者剖検例での心血管病変の検討 腎不全患者では,内膜の粥状硬化症に伴う石灰化や中膜 石灰化の頻度が多いことが知られている8).動脈硬化や血管 石灰化は循環器疾患の危険因子であり9),石灰化については, 心臓の検査にはそれぞれメリットとデメリットがありますが、身体への負担が少なく安全であること、透析患者さんに多い血管の石灰化にも対応できることなどから、心筋シンチグラフィは透析患者さんに勧められる検査です。 透析患者さんの動脈硬化の特徴 ・ミネラル(リン・カルシウム)の代謝バランスが崩れた結果、生じる血管の石灰化が多くみられる。 ・石灰化が起こると血管は硬くなってもろくなり、血管壁が破れる場合がある。 血管が石灰化して硬くなると? を促すステートメントを出している。腎障害患者ではcTnI、cTnTともに心筋に障害が無くとも高値を示す事が報告されており、cTnTがより高頻度に高値を示す(文献28)。正常カットオフ値0.1μg/Lを用いた時、末期腎不全患者の30~85%にcTnT異常高値を認め、5-18%にcTnIの異常高値を認める(文献28)。 cTnIは、腎障害時でも異常高値を示す頻度が低く、また心臓以外での発現が認められないことから(文献29, 30)、cTnTと比較しより正確に心筋障害を繁栄し、腎障害患者に適している事が示唆されている。しかし、近年、米国FDA(The food and drug administration)は末期腎不全患者の予後予知に有用なバイオマーカーとしてcTnTを承認している。またKDOQIガイドライン(文献31)においてもcTnTが推奨されており、本稿ではcTnTについて記載する。Bohnらは約800例の血液透析患者の胸部単純レントゲン写真から大動脈弓部の石灰化を半定量的に判定している(0,1,2,3の4段階判定)(文献1)(図1)。