AnswersNews Plus - 製薬業界のキホンがよくわかるキーワード解説集 薬価改定が行われると、大半の薬は改定前に比べて薬価が下がります。なぜかというと、医薬品卸売業者と医療機関・薬局の間では、薬は薬価よりも低い価格で売買されており、これに合わせて薬価を引き下げるのが、薬価改定の基本だからです。 医療用医薬品の市場は、表向きは公定価格の形をとりながら、その裏では一般の消費財と同じように自由な価格競争が行われているところに大きな特徴があります。医療機関や薬局は公定価格である薬価に基づいて薬の費用を請求する一方、製薬企業から卸、卸から医療機関・薬局に販売される価格は、当事者間で自由に設定することができるのです。 医療機関・薬局にとっては、卸からの仕入れ値と公定価格である薬価の差額はそのまま利益になります(これを 薬価改定は、実際の流通価格(卸から医療機関・薬局に販売された価格= 薬価改定は市場実勢価格に合わせて公定価格を引き下げるのが基本ですので、改定を行うには、まず市場実勢価格を把握しなければなりません。そのために行われるのが、 薬価調査は、薬価改定の基礎資料を得る目的で厚生労働省が薬価改定の前の年に行う調査。販売側(主に医薬品卸)への調査と購入側(病院・診療所・薬局)への調査からなり、薬価基準に収載されている医薬品の品目ごとの販売(購入)価格と販売(購入)数量を、販売側と購入側それぞれに回答してもらいます。 2018年度改定に向けた薬価調査は、前年の17年9月取引分を対象に同年10~11月に行われ、【販売サイド調査】【購入サイド調査】が対象となりました。 厚労省は薬価調査で集めた個々の取引価格から、品目ごとに加重平均値を算出。これを市場実勢価格とし、消費税と、流通コストを担保するための 薬価改定の時期になると、 2017年に行われた薬価調査によると、薬価収載されている全医薬品の平均乖離率は9.1%でした。 薬の市場実勢価格は、生活習慣病など競合が多く価格競争の激しい領域で下がりやすくなります。17年の薬価調査から薬効群ごとの乖離率を見てみると、血圧降下剤(13.3%)や消化性潰瘍剤(13.1%)、高脂血症用剤(12.7%)などが平均を上回った一方、内用の腫瘍用薬(6.6%)、注射の腫瘍用薬(6.0%)、抗ウイルス薬(5.8%)などは平均を下回りました。 薬価改定は市場実勢価格に合わせて薬価を引き下げるのが基本ですが、いくつかの特別ルールが存在します。主なものを見ていきましょう。 の条件のいずれかを満たす新薬です。 新薬創出加算には、企業に対する要件も設けられています。ドラッグ・ラグ解消や新薬開発に対する取り組みを企業ごとに点数化し、上位25%に入った企業は加算が全額もらえる一方、最低点数の場合は2割減、それ以外は1割減となります。 薬価改定時には新薬創出加算以外にも、発売後の適応拡大やエビデンスの創出によってつく加算があります。 薬価収載後に小児に対する適応や用法・用量が追加された医薬品を評価する加算です。ただし、臨床試験を新たに実施していないなど、製薬会社の負担が低いと判断された場合は加算の対象になりません。 薬価収載後に希少疾病に対する適応や用法・用量が追加された医薬品などを評価する加算です。小児加算と同様に、製薬の負担が小さいとされた場合には加算がつきません。 市販後の臨床試験などを通じて真の臨床的有用性が検証された医薬品を評価する加算です。根拠となる試験結果に関する論文が国際的に信頼できる学術雑誌に掲載されたことなどが条件となります。ただし、大学など外部の研究期間が行った試験は対象になりません。 定義が抽象的でわかりにくいので、実際にこの加算が適用された医薬品を見てみると、18年度改定では高脂血症治療薬「レパーサ」が、16年度改定では糖尿病治療薬「ジャディアンス」が、いずれも臨床試験で心血管イベントの発症リスク軽減を示したことが評価され、加算を取得しました。 特許の切れた先発医薬品、いわゆる長期収載品には、市場実勢価格に基づく改定に追加して薬価を引き下げる2つのルールがあります。 1つは、後発品への置き換え率に応じて薬価を追加的に引き下げるルール。検討過程で厚労省がそう呼んでいたことから、このルールは Z2は、後発品の薬価収載から5年たった長期収載品に適用されます。後発品への置き換え率に応じて、と引き下げ幅が決められています。 もう1つは、18年度の薬価制度改革で新たに導入された、いわゆる 後発品の発売から10年たった長期収載品の中には、すでに薬価が後発品の2.5倍以下になっているものも少なくありません。こうした長期収載品は、G1・G2ではなく補完的な引き下げルールの対象となります。これがいわゆる「C」で、後発品への置き換え率に応じて1.5%~2%引き下げます。 市場拡大再算定は、事前の予測を超えて大幅に市場が拡大した(=売り上げが大きくなった)医薬品の薬価を引き下げるルールです。 市場拡大再算定の対象となるのは、の医薬品です。薬価の引き下げ幅は、(1)の場合は最大25%、(2)の場合は最大15%。薬理作用が類似する医薬品も同様に引き下げを受けます。 市場拡大再算定には、特に売り上げが大きい医薬品の薬価を引き下げる特例(で、引き下げ幅は(1)が最大50%、(2)が最大25%です。 市場拡大再算定の特例は16年度の薬価制度改革で設けられた新しいルールです。当時爆発的に売れたC型肝炎治療薬「ハーボニー」など高額な薬剤が医療保険財政を圧迫するとの懸念から導入されたルールですが、製薬業界からは「イノベーションを阻害する」と強い反発が出ました。 18年度にはさらに、2年に1度の薬価改定を待たずに市場が急拡大した医薬品の薬価を引き下げる仕組みも導入されました。市場規模が350億円を超えたものが対象で、年4回ある新薬の薬価収載のタイミングに合わせ、市場拡大再算定のルールに従って薬価の引き下げが行われます。 薬価改定時に行われる再算定には、市場拡大再算定のほかにも、 用法用量変化再算定は主な適応の用法・用量に変更があった医薬品、効能変化再算定は主な適応が変わった医薬品が対象です。用法用量変化再算定は市場拡大再算定と同じように、年4回ある新薬の薬価収載のタイミングに合わせて適用されます。 2年に1度の薬価改定で市場実勢価格にあわせて薬価を引き下げることを原則とする日本の薬価制度では、薬価収載から長い年月がたった医薬品の中には、医療上欠かすことができないにもかかわらず、薬価が大きく下がって採算がとれなくなってしまうものも少なくありません。 薬価改定には、こうした医薬品の薬価を維持したり、引き上げたりして、安定的な供給を継続できるようにする3つのルールがあります。 1つ目は16年の薬価制度改革で導入された、 このルールでは、ものを基礎的医薬品と定義し、最も販売額が大きい銘柄に価格を集約してその薬価を維持します。 具体的には、▽過去に不採算品再算定を受けたもの▽病原微生物▽麻薬▽生薬▽軟膏基剤▽歯科用局所麻酔剤――が対象で、18年度の薬価改定では計261成分660品目が適用を受けました。 これまで2年1度行われてきた薬価改定ですが、21年度からは通常の改定の谷間の年にも一部の医薬品を対象に薬価改定を行うことが決まっています。 これは、薬価の引き下げを通じて医療費削減を狙う政府が16年末にまとめた「薬価制度の抜本改革に関する基本方針」を受けたもの。この方針では対象となる医薬品について「(市場実勢価格と薬価の)価格乖離が大きい品目」とされていますが、具体的にどれくらいの乖離があるものを対象とするのか、その範囲についてはまだ決まっていません。 19年度には消費増税に伴う薬価改定が予定されており、18~20年度は3年連続で薬価改定が行われることになります。谷間の年の薬価改定の対象品目は、この3年連続の薬価改定の影響なども踏まえた上で、20年中に決めることになっています。 【2019年版】国内製薬会社ランキング―武田、買収で2兆円超え 改定響き中堅以下は苦戦2017年度 国内製薬会社ランキング―海外で新薬好調 大手は軒並み増収…国内は改定なしでもマイナス成長【花粉症2020】世界初 抗体医薬「ゾレア」登場…デザレックス供給再開、抗ヒスタミン薬も競争激しく「オプジーボ」続く受難 用量変更でまたも大幅引き下げ…薬価 収載時から76%安くAnswersNews Plus(アンサーズニュースプラス)は、製薬業界で働く人なら必ずおさえておきたいキーワードをイチからわかりやすく解説する、AnswersNewsの姉妹サイトです。新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(7月17日UPDATE)相次いで発表された有望な臨床試験結果…新型コロナワクチンへの期待高まる新型コロナウイルス 抗体の急速な低下、ワクチン開発の課題に【2020年版】製薬会社年収ランキング 1000万円超えは11社 中外も大台に…トップは今年もソレイジア塩野義、中国平安との合弁事業の全貌製薬業界の転職支援Answers(アンサーズ)製薬業界で話題のニュースがよくわかる