2017;57 Suppl 1:9-102.

甲状腺に腫瘍ができた際には、場合によっては手術が必要になります。 こちらの記事では、甲状腺腫瘍で手術が適応となるケースや、手術の方法、そのほかの治療法について解説します。 甲状腺がんの治療を行った後には、再発や甲状腺がんの治療後の日常生活で最も注意しておくことは、それぞれの注意点について詳しく説明します。甲状腺がんに対して甲状腺がんの治療後は、甲状腺ホルモンの不足による症状を起こさないため、また甲状腺がんの増殖を防ぐために、チラーヂン®Sの内服を忘れずに継続する必要があります。飲み忘れたことに気がついた場合には思い出した時に飲んでください。次の日になってから前の日に飲み忘れたことに気がついた場合は、いつもどおり1日分だけ飲んでください。2倍量の内服はしないでください。一時的に体内の甲状腺ホルモン量が増えることで、チラーヂン®Sを内服した後に体内の濃度が半分になるまでの期間(半減期)は7日間です。つまり飲むのをやめても数日間はチラーヂン®Sの成分が体内に残っています。そのため1日飲むのを忘れてもすぐに甲状腺ホルモンが不足することはありません。しかし7日以上に渡って内服できない場合には主治医に相談してください。甲状腺全摘術では甲状腺にくっついている副甲状腺も一緒に摘出します。副甲状腺は甲状腺がんの治療後に食べてはいけないものはありませんが、食事と甲状腺ホルモンの内服のタイミングを検討する必要があります。また甲状腺全摘出術後は人工的に合成した甲状腺ホルモンを内服します。ほとんどの人が飲んでいるのがレボ食事によってはチラーヂン®Sの吸収が悪くなります。チラーヂン®Sの吸収が悪くなると甲状腺ホルモンが不足しチラーヂン®Sの吸収を悪くさせる食べ物は鉄分を多く含むもの(バジル、海苔、あゆ、ひじき、あさりなど)です。野菜ジュース、青汁などの食物繊維が多い飲み物やコーヒーなども、チラーヂン®Sの吸収が低下することが報告されています。鉄は腸の中でチラーヂン®Sと結合して吸収しにくい状態にしてしまいます。このため食事で上記のものを取りたい場合には、チラーヂン®Sを食事の前後30分以上離した時間に飲むようにしてください。放射性ヨード内用療法を受ける場合や、シンチグラフィ検査の前にはヨードの摂取を制限する必要があります。放射性ヨード内用療法やシンチグラフィ検査に使う放射性ヨードを、手術後に残った甲状腺や甲状腺がん組織にきちんと取り込ませるために、体内のヨードを枯渇させておく必要があるからです。ヨード制限食の説明は「放射性ヨード内用療法を受けるための準備:前処置」に詳しく書いてありますので、検査前や治療前には参考にしてください。甲状腺がんの治療後は定期的に外来通院を行い、再発や転移の有無を確認します。症状から再発に気付くことは少ないですが、万一急激な変化を感じた場合には注意が必要です。多くの甲状腺がんでは進行が遅いため、再発したくびのしこりが急激に大きくなることはありません。しかし、くびに塊ができて急激に大きくなるなどの場合には、早めに病院に受診することも検討してください。甲状腺がんの生存率はがんの組織型によって大きく異なります。組織型とは顕微鏡でがんを見た時の見た目による分類です。甲状腺がんの組織型は大きく、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんに分けられます。組織型でいうと、甲状腺がんのうち、乳頭がんや濾胞がんは長期生存する人も多いがんです。参考に乳頭がんと濾胞がんの10年生存率は下記です。10年生存率とは、診断から10年後にも生存している人の割合のことです。甲状腺がん以外のがんでは生存率はあくまで統計上の数値です。一人ひとりの経過には大きな個人差があります。数字はあくまで目安と考えて、自分のいまの状況でできることは何かを主治医とよく話し合うことが大切です。参考:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」、全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2018年2月集計)甲状腺がんの治療後の外来通院は重要です。再発や転移の有無を定期的にみるとともに、甲状腺ホルモンの内服薬を処方してもらう必要があります。がんの再発や転移の有無をみる外来は手術後しばらくたつと、半年に1回程度になることが多いため、甲状腺ホルモンの薬は通いやすい近くの病院でもらうことも可能です。甲状腺がんは一部の進行が早いタイプを除いて、再発や転移を起こした場合でも適切な治療を行うことで、長期間元気でいられることが多いがんです。甲状腺がんの手術後は症状がなくて通院が面倒になることもあるかもしれません。しかし、甲状腺がんの再発は無視できません。たとえば各国の甲状腺がんの定期的な通院では触診のほか、血液検査や画像検査を行います。血液検査では甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモン(TSH)、サイログロブリン、カルシトニンなどの値をみます。甲状腺ホルモンの値は、甲状腺ホルモンの内服が適切に行われているかを判断する役に立ちます。甲状腺ホルモン値が適切な値に保たれるように、必要に応じて内服の量を調整します。乳頭がんや濾胞がんでホルモン治療を行っている時には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が適切に抑制されているかを判断します。TSHが減っていなければ治療を強める必要があります。サイログロブリン、カルシトニン、CEAなどは再発や転移のマーカーとして検査を行います。乳頭がんや濾胞がんで甲状腺全摘術後にサイログロブリンが上昇してきた時には、再発や転移を疑って、画像検査を追加で行います。髄様がんではカルシトニンやCEAが上昇してきた時には再発や転移を疑って、画像検査を行います。ホルモン治療を行っている場合には、甲状腺がんの再発のしやすさや、再発後の治療の効果の出やすさは組織型によります。組織型とは顕微鏡でがんを見た時の見た目による分類です。甲状腺がんの組織型は大きく、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんに分けられます。甲状腺がんの再発は甲状腺がんを手術で取り除いた部分に再発する場合と、周囲の首の再発や転移と聞くと落ち込むことがあるかもしれません。しかし、たとえ再発したとしても、甲状腺がんの再発や転移では治療可能なことが多いので、主治医とよく相談して治療を行ってください。再発しやすい場所は甲状腺がんがもともとあった場所や、近くのリンパ節です。甲状腺を半分残す手術をしていた場合には、残った甲状腺に再発することもあります。その他にも遠くの臓器への転移(目で見えないほどの大きさの再発病変には放射性ヨード内用療法は効果がありますが、画像でうつるような大きさの再発病変に対しては放射性ヨード内用療法の治療効果がありません。肺や骨でも1か所の転移の場合は手術を行いますが、肺に小さな転移巣がたくさんある場合や、骨転移が多数ある場合には手術で取りきることが難しく放射性ヨード内用療法を行います。放射性ヨード内用療法は乳頭がんや濾胞がんの細胞が、もともとの甲状腺の細胞と同様な働きを持っており、ヨードを取り込むことを利用した治療方法です。がん細胞が変化して、ヨードを取り込む仕組みがなくなった場合には、放射性ヨード内用療法の効果が期待できません。ヨードを取り込む仕組みが低下した場合には、分子標的薬を使った髄様がんでは基本的には再発した部位を手術で摘出します。摘出ができない場合には抗がん剤治療を検討します。髄様がんは肝臓に転移することがあります。肝転移に対しては、甲状腺がんの末期というとどのような状態を想像するでしょうか。甲状腺がんの末期状態とは、がんに対する積極的な治療を行うことができないような状態をさします。例えば、再発してがんはある程度進行しないと症状がでないことも多く、治療中断時点では、症状がなく元気なこともあります。あるところを超えると、突然症状がでて、一気に進行したように感じるかもしれません。突然症状がでた後には、日常生活を送るのがやっとの体力で、ベッドの上で生活するような状況になることもあります。その前の体力がある時期に、自分らしく、やりたいことをして過ごすのも、重要なことです。では本当に末期になり、症状が強く出るとどんな状態になるのでしょうか。甲状腺がんが進行した場合の症状は、甲状腺がもともとあった部位でがんが大きくなる場合と、遠隔転移をした臓器でがんが大きくなる場合とで異なります。甲状腺がもともとあった場所で再発して大きくなった場合や、近くのリンパ節に転移して大きくなった場合には、頸部が大きく腫れます。未分化がんなどの場合には頸部の腫れが強くなり皮膚が赤くなることがあります。頸部でがんが大きくなった場合には呼吸ができなくなることがあります。甲状腺はもともと気管の前に張り付いている臓器です。転移しやすいリンパ節も気管の周囲にあります。気管は空気の通り道で呼吸をするための重要な経路です。気管の周囲で再発してがんが大きくなると、気管を圧迫したり、気管の中にがんが入り込んだりします。すると、身体に十分に空気を取り込めなくなり、苦しくなってしまいます。がんが大きくなって、苦しくなりそうな場合の対処方法としては、呼吸を楽にするための薬を使う方法と、呼吸の経路を作る方法があります。呼吸を楽にするための薬は呼吸は楽になりますが、空気の通り道を塞いでいるがんはそのままであり、別に呼吸の経路を作らなければいずれ窒息してしまいます。呼吸の経路を作る方法は気管内挿管と気管切開という方法があります。気管内挿管では口から気管にかけて、細長いチューブを入れて呼吸の経路を確保します。気管内挿管中は鎮静薬を使う必要があり、意識がありません。意思疎通ができず、眠ったままになります。食事などもとれず、動くこともできません。もう一つの方法は気管切開です。気管切開とは気管の真上の皮膚を切り開いて、気管に穴をあけて呼吸ができるチューブをいれて、呼吸の経路を作る手術です。気管切開では頸部の鎖骨の間あたりの皮膚を3-5cmほど切開し、皮下の筋肉を避けて、気管に穴をあけます。気管の穴に、直径10mm程度のシリコン製のチューブ(気管切開チューブ、気管切開カニューレ)を入れて、そのカニューレを通して呼吸ができるようにします。気管切開を行う利点は気管内挿管と違い、意識のある状態でいられることです。意思疎通ができ、動くこともでき、食事もできます。気管切開を行って不便な点は、声がでなくなること、咳や痰が多くなること、食べ物が飲み込みにくくなること、首までお風呂につかれないこと、便をいきめないことなどがあります。甲状腺がんが肺に転移した場合は、最初は無症状ですが進行すると胸に水が溜まり(甲状腺がんが骨に転移した場合には、骨の痛みが出ることや、通常は骨折しない程度の弱い力で骨折(甲状腺がんが脳に転移したものは脳がむくむことで起こる症状として、頭痛、吐き気や嘔吐などがあります。こうした症状がある場合の治療には、脳のむくみをとる薬などを使います。
甲状腺がんからリンパ節への微細な転移があっても、生命への影響は少ない.

[mixi]甲状腺腫瘍(良性or悪性) 手術するorしない? 『ご意見下さい』のトピで沢山のレスを頂き有り難うございました。 まだ5ミリの乳頭癌を摘出せずにいます。 セカンドオピニオンでガンセンター受診しました。 どちらでもイイと言われ、一応年齢の事も考え手術する 監修:杉谷巌 癌研有明病院頭頸科医長 「がんは、手術で取らなければ命にかかわる」というが、実はそうではない。甲状腺がんの大部分は、命にかかわらないがんの代表格だ。 手術だけでなく、放射線も、抗がん剤も一切行わず、定期的に経過を観察するだけ。 それで本当に安全なのか?なぜそんなことが可能なのか。「究極的に身体に負担のない治療法」を紹介しよう。 発見したらただちに手術という、従来のがん治療のイメージを大きく覆す治療法が、いま大きな注目を集めている。甲状腺がんの非手術経過観察療法だ。これは、文字通り、がんが見つかっても手術をせず、ただ経過観察を続けるだけ。つまり、何の治療もしないという方法だ。甲状腺がんの中でも、人間ドックや定期検診の際、超音波検査等で偶然発見されることの多い無症状の甲状腺微小乳頭がんが、その対象となる。 「これまで甲状腺微小乳頭がんは、見つかると手術で切除してきましたが、実はがんで死ぬことはほとんどありません。長期にわたる経過観察によって、腫瘍の増大やがんの浸潤、転移が生じたときに限り手術で切除すれば、それまでと変わらない生活を送ることができるのです」 と癌研究会付属病院頭頸科医師の杉谷巌さんは指摘する。 患者にとって治療は、生存率、生存期間等の治療成績が同じなら、できるだけ身体に負担の少ないのがよい。まして経過を観察するだけという非手術経過観察療法は、治療に伴う障害や副作用が生じようがないから、究極の患者にやさしい医療といえる。 甲状腺は首の前方の真ん中、気管の表面に付着する 甲状腺がんは、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫の5種類に大きく分けられ、日本人の甲状腺がんの大半、9割近くが乳頭がんである。乳頭がんの中で腫瘍の大きさが1センチ以下のものはとくに微小乳頭がんと呼ばれる。非手術経過観察療法の対象となるのはこの微小乳頭がんのうち、がんの浸潤による声のかすれやリンパ節転移、血行性転移等の症状が認められない無症候性のものだ。 症状のない微小乳頭がんが経過観察するだけでよいのは、次のような明白なデータが得られているからだ。 「一つは癌研病院でかつて微小乳頭がんを切除した178人の患者さんのうち、症状のなかった148人の中には乳頭がんで死亡した患者さんが1人もいなかったからです」 もう一つは甲状腺がん以外のいろいろな原因で亡くなった人を解剖して調べてみると、10人に1~3人(9~28パーセント)が甲状腺微小乳頭がんになっている。ところが、甲状腺がんで死亡する患者は1年間に1000人ほどでしかない。つまり、ほとんどの微小乳頭がんは小さなままで、生涯を終えているというわけだ。 癌研病院では、1995年から腫瘍の大きさが1センチ以下の甲状腺微小乳頭がんの患者には非手術経過観察療法を勧めている。ただし、(1)血流に乗って遠くの臓器へ転移していたり、(2)直径1センチ以上のリンパ節転移があったり、(3) 「これまで90人の甲状腺微小乳頭がんの患者について1~11年にわたって経過を観察していますが、腫瘍が少し大きくなったのは9人(10パーセント)だけでした。71人はほとんど変化がなく、残りの10人は腫瘍が縮小さえしたのです。しかも、経過観察中に遠隔転移や甲状腺周辺へのがんの浸潤が認められた患者は1人もいませんでした」 手術を受けたのは、腫瘍が少し大きくなった2人の患者と頸部リンパ節への転移が見つかった1人の患者の計3人だけだった。もちろん、手術を受けた患者の中で亡くなった人はいない。手術のために声がれなどの障害が生じた人もいなかった。 早期発見・早期治療はがん治療の原則といわれるが、甲状腺微小乳頭がんの場合、それは当てはまらない。微小乳頭がんを早期に見つけては、それを片っ端から手術することは病人を治しているというより、むしろ病人をつくり出すことになっていると考えられる。 鈴木智恵さん(仮名)が微小乳頭がんと診断されたのは1991年、57歳のときだった。癌研病院で首の超音波検査を受けたところ、甲状腺の左葉に8ミリの大きさの腫瘍が発見されたのがきっかけだ。 何の症状もないのに、検査( 病院では手術の必要がなく、経過観察だけでよいと言われたが、当初は不安を隠せなかった。手術は避けたいという思いがある一方、がんが発見されたのは事実だからこれで万一のことがあるかもしれないという不安も抱いた。 しかし、経過観察を受けるたびに腫瘍の大きさに変化がないことから次第に落ち着き、心配しなくなっていった。微小乳頭がんが発見されてから今年で12年目になるが、いまはもうまったく不安を覚えることはない。ごく最近の検査では、腫瘍の大きさが7ミリ、ほとんど変化がないことが確認されている。 現在日本では、甲状腺微小乳頭がんは手術をせず経過観察だけするのと、手術による切除をする二つの治療法が行われている。前者を採る医師や病院は約4割で、後者は約6割。微小乳頭がんの特性を知らない医師や病院にかかると、がんが見つかっただけでたちまち手術ということになりかねない。その結果、首に違和感を覚えるといった障害を招くことになる。腫瘍の大きさが1センチ以下の無症候性の微小乳頭がんの場合、医師とよく話し合い、十分に納得できる対処法を選ぶことが不可欠だ。 「がんは、手術で取らなければ命にかかわる」というが、実はそうではない。甲状腺がんの大部分は、命にかかわらないがんの代表格だ。 監修 杉谷巌 癌研有明病院頭頸科医長

甲状腺がんの治療を行った後には、再発や転移などの不安があるかもしれません。甲状腺がんの多くは手術後に長い通院期間が必要になります。日常生活の疑問や、再発や転移が起きやすいのか、いつまで通院すればいいのかなどの不安が湧いてくることもあると思います。 甲状腺腫瘍の手術は甲状腺を摘出します。 甲状腺は約3割残っていれば正常な量の甲状腺ホルモンを分泌することが可能です。 でも、甲状腺が3割にも満たないくらい手術で摘出されると 甲状腺ホルモンを正常な量、分泌することができなくなります。
最大径が1cm以下の甲状腺がんを「甲状腺微小がん」と呼びます。甲状腺の微小がんとは共存できるとしても、放置すれば転移の恐れがあるのではないか。これは当然の心配です。 q 甲状腺癌の手術後の麻痺について教えてください.

H20.6.19に甲状腺乳頭がんで甲状腺亜全的手術を受けました。 手術後の経過も良く、声も3日後には以前のように出るようになりました。