文字の大きさ2019年12月26日 16:48 公開イギリスのエリザベス女王は25日、毎年恒例のクリスマスのあいさつで「小さな一歩が大きな飛躍になる」と語った。また、2019年は「特にでこぼこな道」に感じられたと述べた。2019年のイギリスでは、年初からブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)をめぐり激しい議論が続いた。王室でも、王族個人に関わる出来事が数多く起きた。エリザベス女王のあいさつはBBCが製作し、12月12日の総選挙後にウィンザー城の緑の間で撮影。25日午後3時(日本時間26日午前0時)にBBC Oneで放送された。女王はアンジェラ・ケリーのロイヤルブルーのカシミアドレスに、サファイアとダイヤモンドのブローチを着けた。このブローチは、1840年のヴィクトリア女王結婚式で、夫のアルバート王配殿下から贈られたもの。眼前の机には、いくつかの写真が置かれた。チャールズ皇太子と妻のコーンウォール公爵夫人のもの、孫のケンブリッジ公爵ウィリアム王子とキャサリン妃と、ひ孫のジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子が写ったもののほか、父親のジョージ6世のモノクロ写真も見てとれる。メッセージの中で女王は、イエス・キリストの生涯から融和の重要性に触れ、「信仰と希望に支えられた小さな一歩が長年にわたる対立を克服し、深い分裂に調和と理解をもたらします」と話した。「道は常に平らなわけではありません。今年は特にでこぼこ道だと感じられました。しかし、小さな一歩が大きな違いを生むこともあります」また、第2次世界大戦の「過去の対立を忘れよう、共に前に進もうという意志のもと、かつて多大な犠牲の下に勝ち取った自由と民主主義に敬意を表します」王室にとっても、2019年は波乱万丈の1年だった。女王の夫エディンバラ公フィリップ殿下(98)は24日、4泊したロンドンの病院を退院。王室は、「主治医の勧めを受け」た「念のため」の措置だと説明していた。フィリップ殿下は1月、ノーフォーク州にあるサンドリンガム宮の近くで5月には、孫にあたるサセックス公爵ハリー王子と妻のメガン妃の間にさらに11月には、女王の第三子のヨーク公爵アンドリュー王子が、25日のクリスマス当日、毎年恒例の聖メアリー・マグダレーン教会での礼拝に、ジョージ王子(6)とシャーロット王女(4)が初めて参加した。王族は伝統的に、サンドリンガム宮でクリスマスを過ごし、クリスマスの朝に礼拝に臨む。教会の外には王族を一目見ようと人々が集まり、ジョージ王子とシャーロット王女に花束や贈り物を渡していた。一方、フィリップ殿下は参加を見送ったほか、アンドリュー王子は他の王族とは別の入り口から教会に入るなど、目立たないよう参加していた。また、クリスマスをカナダで過ごしているサセックス公爵夫妻は23日、「今年は特にでこぼこ道だと感じられました」エリザベス女王はクリスマスのあいさつで、2019年をこう振り返った。この言葉を選んでの発言が何を指しているのか、推測せずにはいられない。女王自身は特定の事柄に言及していたわけではない。しかしこの言葉は、女王が「希望と信仰に支えられた一歩」が、「長年の相違」や深い分裂を克服すると述べた文脈で語られた。これが、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)による分裂から動き出してほしいという女王のメッセージだと読み解くことは簡単だ。一方「でこぼこ道」という表現は、フィリップ殿下の自動車事故、サセックス公爵夫妻のメディアとの確執、そしてアンドリュー王子に向けられた疑惑など、女王自身の家族に起きた出来事を表しているように思える。(英語記事 Copyright © 2020 SANKEI DIGITAL INC. All rights reserved. その後、エリザベス女王から始まって、王室メンバー、首相などが花輪を慰霊碑前に置く。この模様はテレビで生中継される。 英国内各地:各地の慰霊碑の周辺で同様の儀式が行われる。地元の教会前に有志が集合し、慰霊碑まで追悼行進をした後、黙とうと花輪の配置などを行う。誰でも参� 英国では、毎年10月頃から、道行く人の上着やテレビ番組に登場するアナウンサーの背広の襟部分に、赤い花の飾りを見掛けるようになる。一般的には「ポピー」と呼ばれるこの花と、毎年11月に開催される、戦死者を追悼する日「リメンバランス・サンデー」の関わりに注目した。(資料:BBC、英国在郷軍人会のウェブサイト)午前11時、英国内(及び英連邦諸国などを含む世界の複数国)で、第一次大戦の戦死者を追悼するための2分間の黙とうが行われる。英国では今年、「記念日」または「追悼する日」という意味が込められた「リメンバランス・サンデー」を11月13日に迎える。追悼の対象は、当初は第一次大戦(「関連キーワード」参照」)の戦死者たちであった。1918年11月11日の午前11時、第一次大戦で敗戦国となったドイツが、勝者である連合国軍側との休戦協定を結んだ。その翌年から毎年、11月の第2週の日曜日または11日に近い日曜日のいずれかに、追悼式典が開催されてきた。同大戦は、近代兵器が使われた初めての世界規模の戦争で、大戦中の戦死者数は数百万に上った。この戦争の犠牲となった戦死者たちを忘れず、またこの大戦が「最後の世界大戦」となることを願って、当時の英国の国王であったジョージ5世が、2分間の黙とうを含む式典を開催する「リメンバランス・サンデー」の創設を主導。以後、第一次大戦だけではなく、第ニ次大戦や最近のアフガニスタンやイラクにおける戦死者など、英国が関与した様々な戦争で命を落とした兵士を追悼する日となっている。英国では秋が深まるころになると、紙でできた赤いヒナゲシの花のブローチを、洋服の襟部分などにピンで留めている人の姿を多く見かけるようになる。ブローチの販売は英国在郷軍人会という団体による募金活動の一つであり、販売を通じて得た収益金が、英軍関係者への支援に使われる仕組みになっているのだ。戦死者への追悼の意を表しながら、英兵士にいくばくかの金銭的支援を提供できるとあって、毎年この時期、英国では多くの人がブローチを買い求める。一方で、ブローチを着用することに反発を感じる人は少なくない。「ほかの人と同じような行動を取りたくない」という英国人気質から反発を示す人がいれば、「愛国心の表明を強制されたくない」と言う人もいる。また戦死者に対して追悼の意を表明するという行為について真剣に考える人々の中には、テレビのキャスターなどが判を押したようにヒナゲシのブローチをつけて画面に登場する様子をかえって不快に思ったり、さらには侮辱とさえ受け止める人もいるようだ。実際に、戦死した父親を持つある高齢者は「本当に、戦死者に思いをはせてブローチを付けているのだろうか」「ブローチをつけることが社会的に正しいとされているから付けているだけではないのか」との見解を、あるメディアの取材を通じて述べていた。「リメンバランス・サンデー」は、英国に住む人にとっては過去を振り返る機会であるとともに、現在でも世界各地の紛争地に自国の兵士を送り続ける、戦争の「現役国」であるという現実を改めて受け止めながら、これ以上の死者を出さないようにと改めて願うときでもある。日本とはまた違った戦争についての歴史を持つ英国という外国に住む私たち在英日本人にとっては、この式典を体験することで、様々なことを学ぶことができる機会になりそうだ。当ウェブサイトに掲載されている広告は、必ずしも弊社の見解(政治観・宗教観等)を反映するものではありません。また弊社はその内容に対し、責任を負いかねますのでご了承ください。 エリザベス女王のあいさつはBBCが製作し、12月12日の総選挙後にウィンザー城の緑の間で撮影。25日午後3時(日本時間26日午前0時)にBBC Oneで放送された。 女王はアンジェラ・ケリーのロイヤルブルーのカシミアドレスに、サファイアとダイヤモンドのブローチを着けた。このブローチは、1840